発行会社の新株を一定条件で買い付けることのできる権利(すなわち新株引受権)が付けられていた社債。1981年(昭和56)の商法改正により発行が可能となった。新株引受権はワラントwarrantといわれるので、略してワラント付社債あるいはワラント債と通称される。ワラントで買付けのできる新株の価格(行使価額という)は、社債発行時の株価よりやや高い水準に決められる。買付けのできる数量は社債額面の100%が通例だが、100%以下の場合もある。債券購入後、株価が行使価額より高くなれば、このワラントを行使して時価よりも安く株を購入し、もうけることができる。社債の満期時までにワラント行使の機会を失えばワラントは無価値となる。新株引受権付社債には、このワラントを社債と切り離して売買することができる「分離型」と切り離すことのできない「非分離型」があった。切り離されたワラントの価格は株価動向を反映する。ワラント債は甘味剤付社債といえるもので、株高のときには魅力が増し、一般の社債より低利率での発行を可能にした。しかし、2002年(平成14)4月施行の改正商法により、新株予約権制度が創設され、社債に付随しなくても新株予約権が単独に発行できるようになった。このため分離型の新株引受権付社債は、社債券と新株予約権証券の同時発行という位置づけとなり、非分離型の新株引受権付社債は、「新株予約権付社債」という制度に移行した。これは従来の転換社債の仕組みと同じことになるわけで、証券業界では「転換社債型新株予約権付社債」という名称を使用している。こうして「新株引受権付社債」という制度は約20年で消滅した。
[後藤 猛]
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…株式買取権とは,一定の期間(期間の定めがないこともある)内に,一定価格で一定数量の社債発行会社の株式を買い取ることができる権利である。 株式買取権付社債の一つに新株引受権付社債がある。これは,社債の償還期限内の一定の期間に一定の数または額の新株の発行を会社に対して請求することができる権利が付与された社債である。…
…(3)取締役・使用人の新株引受権 1997年改正商法が新たに設けた新株引受権(ワラント)方式のストック・オプション制度に基づくもので,定款に定めがあり,正当の事由があるときに,株主総会の特別決議で与えることができ,発行価額は特に有利でもよい(280条ノ19)。(4)新株引受権付社債権者の新株引受権 新株引受権付社債(〈株式買取権付社債〉の項参照)の発行条件に従い,所定の期間内に,所定の発行価額で,所定の数の新株を引き受けうる権利。新株引受権者は,所定の発行価額より株式の市場価格が上回ったときに,新株引受権を行使して利益を得る。…
…一方,発行者にとっても,社債よりクーポン・レート(表面利率)が低く,増資に比べ配当負担の発生を分割できるなど低コストで長期安定資金を調達できるメリットがある。転換社債と似た社債に,1981年10月の商法改正で規定が設けられた新株引受権付社債(ワラント付社債とも呼ばれる。〈株式買取権付社債〉の項参照)がある。…
※「新株引受権付社債」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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