家庭医学館 「新生児の頭蓋内出血」の解説
しんせいじのずがいないしゅっけつ【新生児の頭蓋内出血 Intracranial Hemorrhage】
頭蓋骨(ずがいこつ)の内側におこる出血です。出血部位によって、硬膜下(こうまくか)出血、くも膜下(まくか)出血、脳室内出血、脳実質(のうじっしつ)出血などに分類されています。
新生児の頭蓋内出血は、分娩(ぶんべん)時の外力による外傷性のものと、仮死状態で生まれた際の血液中の酸素不足による低酸素性のものとがあります。34週未満の未熟児は脳の形成が未熟なため、脳室内出血が発生しやすくなります。出血の程度により症状はさまざまです。
[症状]
いずれの出血も、軽度の場合は一過性か無症状です。
出血量が多いと、全身の失血による貧血症状がみられ、血圧低下などショック状態となります。また、出血によって脳が圧迫されると、頭蓋内の脳圧(のうあつ)が上昇する脳圧亢進(のうあつこうしん)症状や髄膜刺激(ずいまくしげき)症状がおこり、かん高い泣き声、異常な動き、けいれんなどがみられます。
[検査と診断]
症状から出血が疑われたら、超音波検査、CT、磁気共鳴画像装置(MRI)などで頭部を検査して診断を確定します。
[治療]
出血の種類と程度により異なりますが、軽度の出血では症状への対症療法だけですみ、正常な発達が期待できます。
出血多量のショックに対しては輸血や輸液などの全身管理が必要になり、頭蓋内の脳圧を下げるほか、脳への圧迫をとるために血腫(けっしゅ)除去手術が必要となることもあります。
出血後に髄液(ずいえき)がたまって脳室が拡大する場合は、髄液を排出するためシャント(髄液還流)術が行なわれます。