方等(読み)ホウドウ

精選版 日本国語大辞典 「方等」の意味・読み・例文・類語

ほう‐どうハウ‥【方等】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] vaipulya の訳。「毘仏略」などと音訳し、方広、広大などとも訳する ) 仏語。
  2. 十二分経の一つ。広大で深い仏の教えを発展させたもの。方等経。
    1. [初出の実例]「方等・般若・法華・涅盤等の経に、皆成仏の因縁を説き給へるなり」(出典:康頼宝物集(1179頃)中)
    2. [その他の文献]〔出曜経‐六〕
  3. 大乗、または大乗経のことをいう。
    1. [初出の実例]「又所々にして方等くさぐさの経をあらはすに」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
    2. [その他の文献]〔北本涅槃経‐七〕
  4. ほうどうじ(方等時)
    1. [初出の実例]「方等」(出典:長秋詠藻(1178)上)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「方等」の意味・わかりやすい解説

方等
ほうとう

仏教で、大乗の経典をさす。方広ともいう。原語はサンスクリット語でバイプルヤvaipulyaである。本来、「広い」とか「大きい」とかの意味をもつにすぎないが、大乗では非常に重要な意味をもつように喧伝(けんでん)されている。それは方等が、仏所説や如来(にょらい)所説の十二部経(じゅうにぶきょう)の一とせられ、後世に製作された大乗経典が、十二部経の方等にあたり、したがって大乗経典は仏説であると主張されたためであろう。すなわち、パーリ語の九分(くぶん)教ベーダッラvedalla(教理問答)のかわりに、サンスクリット語の十二分教ではバイプルヤvaipulya(方等)と置き換え、このバイプルヤがすなわち大乗の経典をさすとする。後世発達した経典の権威づけのために、九分十二分教の転釈が行われたとみられる。

[前田惠學]

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