仏典の文章を叙述の形式または内容から12に分類したもの。サンスクリット語からそのまま訳して十二分教ともいう。釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))の説法を9種にまとめた九部経(くぶきょう)に、(1)戒律制定の事情を述べるニダーナ(因縁(いんねん)物語)、(2)過去仏の世のできごとを物語るアバダーナ(過去世物語)、(3)解釈説明の形式ウパデーシャ(釈論)の3種を加えたもので、九部経より発達した形である。これらの形式を備えた法語類は、釈尊の説法をまとめたものとして尊重せられ、後世経典の作製にあたっては、この形式を準用することが少なくなかった。もっとも九部経、十二部経といっても、かならずしも具体的にまとまった経典の叢書(そうしょ)が存在したわけではない。しかし、ウダーナ、イティブッタカ、ジャータカなど、その名をもつ実在の経典もあり、またスッタ、ゲイヤ、ベイヤーカラナ、その他についても、現存経典のなかに、相当する内容を指摘することができる。
[前田惠學]
『前田惠學著『原始仏教聖典の成立史研究』(1964・山喜房仏書林)』
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