日比村(読み)ひびむら

日本歴史地名大系 「日比村」の解説

日比村
ひびむら

[現在地名]玉野市日比一―七丁目・羽根崎町はねざきちよう明神町みようじんちよう御崎おんざき二丁目・渋川しぶかわ一丁目

利生おどう村の南に位置。南は瀬戸内海に面し、古くより港町として栄え、近世には町並を形成していた。南海なんかい道が瓶割かめわり川に沿って長尾ながお村に続く。沖合の海は「ひゞの手」とか「ひゞき灘」とよばれ歌学書名所とされる。「源氏物語」玉鬘の巻に記す、玉鬘が肥後の監から逃れ筑紫から京への瀬戸内航路を東へ向かう場面の「響の灘」は、「河海抄」や「花鳥余情」は備前とする。「年を経て響の灘に沈む舟波のよするを待にぞ有ける」(忠見集)などと詠まれているが、「能因歌枕」などは播磨国に入れる。また「万葉集」巻一五の「昨日こそ船出はせしか鯨魚取り比治奇ひじきの灘を今日見つるかも」も一説では響の灘を詠んだものとする。西行の「敷き渡す月の氷を疑ひてひびの手まはる味鴨の群鳥」(山家集)も当地沖を詠んだものという(「備陽国誌」など)

中世には備前の要港として開け、文安二年(一四四五)の「兵庫北関入船納帳」によると米や大麦小麦・大豆・塩を積んだ日比からの船が兵庫北関へ入津している。文明一九年(一四八七)の防州下向之条目(東福寺志)によると、京都東福寺の使が周防得地に向かう途中、九月一八日に牛窓うしまど(現邑久郡牛窓町)に泊し、翌日出立したが日比の沖で海賊に襲われている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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