室町時代の《源氏物語》注釈。30巻。著者は一条兼良(かねら)。1472年(文明4)に成る。古くは〈かちょうよせい〉とも呼ばれた。四辻善成の《河海抄(かかいしよう)》のあとをうけて,その遺漏を補い,誤りを正すことを意図した書。《源氏物語》のみならず広く和漢の学に通じ,当代一の学者であった兼良の学識を反映した著作であるが,《河海抄》が出典,準拠など考証を主としているのに対し,本書は煩瑣な考証は控え,《源氏物語》の本文に即した文意,歌意の説明,文脈の解明に重きを置く。なお,兼良には《源氏物語》に関する著作として,ほかに《源氏和秘抄》《源氏物語年立(としだて)》《源語秘訣》がある。
執筆者:今西 祐一郎
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「かちょうよじょう」とも。室町時代の代表的な「源氏物語」注釈書。30巻。一条兼良著。1472年(文明4)初稿成立。序文でみずから「河海抄」の跡を追い,「残れるをひろひ,あやまりをあらたむる」という。伝本の系統に,76年大内政弘の求めに応じた宮内庁蔵の再稿本,78年後土御門(ごつちみかど)天皇の求めに応じた竜門文庫蔵の献上本がある。出典考証,典拠を重んじた前代までの注釈と異なり,むしろ文脈の理解に重点がおかれる。同じ著者に秘説15条をまとめた「源語秘訣」がある。「国文註釈全書」,松永本「源氏物語古注集成」所収。
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…四辻善成(よつつじよしなり)(1326‐1402)の《河海(かかい)抄》は博引旁証,注釈の基礎を築いた。室町時代には,一条兼良の《花鳥余情》は鑑賞や語法面に新機軸を開き,宗祇およびその周辺の連歌師たちもそれぞれ業績を残している。三条西実隆はこのころの代表的な文化人であるが,肖柏の講釈をまとめた《弄花(ろうか)抄》のほか,《細流(さいりゆう)抄》《源氏物語系図》(いわゆる新系図)を作った。…
※「花鳥余情」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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