映画産業(読み)えいがさんぎょう

百科事典マイペディア 「映画産業」の意味・わかりやすい解説

映画産業【えいがさんぎょう】

映画が発明されると同時に街頭見世物として商品化され,やがて専用スタジオ,専門興行場が続出,1897年には米国に最初の株式組織の映画会社が出現した。第2次大戦前はフランスやイタリアの映画産業が優勢だったが,その後は米国が喜劇活劇の大量生産で進出し,現在はハリウッドが世界市場の2/3を占める。日本映画は1896年のキネトスコープ輸入に始まり,やがて劇映画製作本数では米国,インドをしのいで年間562(1937年)の世界1位を記録,映画館数は7457(1960年)に達したが,テレビの普及につれて各国と同様に減少傾向にある(1992年の映画館数は1647)。また日本では,映画産業の三部門である製作,配給,興行を一手に引き受ける大手会社数社が市場を独占しているため,興行収益が作品の質に影響することが大きい。一方,独立プロも急増している。また映画は世界共通の娯楽として流通性があり,合弁出資の映画製作(合作映画),国際的規模の映画祭も盛んである。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「映画産業」の意味・わかりやすい解説

映画産業
えいがさんぎょう
motion picture industry

映画は莫大な制作費,興行上の必要性から,ほかの芸術に比較して,産業としての性格が著しく強い。映画興行が確立したのは,映画が移動巡回形式から固定映画劇場へ移行した 20世紀の初期であった。それから 20年後,夢の工場といわれたハリウッドでの映画制作は産業,経済のなかで大きな地位を占めるようになった。映画会社は制作部門,配給部門,興行部門を独占的に支配し,興行成績の高い作品が集中的に作られるようになる。その結果生じたのはスター・システムであり,ルーティン化した商業主義である。日本でも活動写真から映画に移行するにつれ,映画産業は高度資本主義社会のなかで大きな成長をとげたが,テレビの出現により 50年代をピークとして下降の状況にある。

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世界大百科事典(旧版)内の映画産業の言及

【映画】より

…彼の関心は,技術の改良と写真機や映写機の製作という仕事だけに限られていたといわれる。
【映画産業の成立】

[映画館,映画興行の始まり]
 1897年5月,パリの慈善バザールの余興として人気絶頂の〈映画〉の上映会が行われている最中に,映写機の光源(当時は電気でなくガスを用いていた)から出火し,たちまちテント張りの会場が火につつまれて,死者180名(一説には325名)を出す大惨事が起きた。ポール・ローサの《今日までの映画》(1930)によれば,〈この惨事はヨーロッパ中の人々に打撃を与え,この恐ろしい悪魔の装置が大衆娯楽を生み出すものとしてうけいれられるまでにはその後数年を要した〉という。…

※「映画産業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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