日本大百科全書(ニッポニカ) 「春木一郎」の意味・わかりやすい解説
春木一郎
はるきいちろう
(1870―1944)
ローマ法学者。1894年東京帝国大学法科大学卒業後、京都帝国大学(1901~12)、東京帝国大学(1912~30)教授。日本で初めてローマ法研究のためドイツ留学を命ぜられ、帰国後ただちにローマ法講座を担任し、日本における本格的なローマ法研究の先駆者となった。歴史法学派を批判して、法制度を他の社会現象とともに研究することを強調し、初期ローマの法制度を取り上げて原史料に基づいたローマ法史の再構成を試みた。また、古典時代の法がユスティニアヌス帝法により書き改められた点を明らかにする法文批判研究も行っている。これらは当時のドイツの学問状況を反映したものであったということができる。黒板に書いた文字をいっさい消さなかったことも語りぐさになっている。主著に『儒(ゆ)帝法学撮要重要語纂訳(さんやく)』(1932)、『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂(いさん)プロータ』(1938)がある。
[佐藤篤士]