翻訳|blackboard
チョークなどで文字や図などを書くための掲示用の板。黒板は16世紀のヨーロッパで使われるようになったが、必須(ひっす)の教具として認められるようになったのは19世紀以後のことである。日本では1872年(明治5)大学南校の教師スコットMarion M. Scott(1843―1922)によってアメリカから導入され、またたくまに全国の学校に普及した。初め黒板は、一斉教授法による授業のもとで中心的教具として教師の専用物であったが、1920年代の新教育運動などもあって、しだいに子供に開放されてきた。
黒板は今日でも教室でもっともよく使用される重要な教具としての位置を占めている。黒板は最初木製でほぼ1メートル四方の板に黒い塗料を塗り付けた程度のものであったが、しだいに改良され、今日では多くの種類がある。構造からみると、一般的な据え付け式のほか、掛け式、移動式、上げ下げ式、開閉式などの黒板がある。平面黒板、光の反射をなくした曲面黒板、運搬や保管に便利な巻き軸黒板などもある。
材質も、木製のほかにビニル製、スチール製が多くなり、チョークのほかに水性のインキも使用されるようになった。スチール式ではマグネットを用いると印刷物などの掲示ができ、それだけ機能が拡大してきている。色も、目の衛生、感じなどから、ほとんど暗緑色のものになり、白色の黒板(ホワイトボード)も普及してきた。多くの黒板は無地であるが、五線、グラフ、白地図、天気図、行事予定などの書き込まれたものもある。学校教育用のほかに、オフィス事務、家庭用などの黒板もある。
[森分孝治]
『石川実著『黒板の文化誌――教育のためのもうひとつの世界』(1998・白順社)』
白墨(チョーク)で字や図を書きつけて掲示するために黒色または緑色に塗られた板。主として集団教授の際に用いられる。古くは塗板とも呼ばれた。ヨーロッパで16世紀ころに使用されはじめ,19世紀に公教育制度の確立とともに広く普及した。日本では,1872年(明治5)創設の東京師範学校で外人教師M.M.スコットがアメリカから取り寄せて用いたのが最初であり,73年全国各地に小学校が設立されるに伴って,必需の教授用具として全国に普及した。当初は木板に墨汁を塗りつけただけの粗末なものだったが,学校設備の整備とともに退色しないよう塗料に改良が加えられ,今日では永久着色の合成板を用い,光線の反射をさけて両端をゆるく湾曲させ,チョークとの色彩コントラストを配慮して緑色のものが多い。多数の学習者を対象とした一斉教授には欠かせない用具であるが,子どもの自発的な学習を進めるために,教室の二面に設置したり,小黒板を別に設けて子どもたち自身に使用させるなどのくふうが加えられる場合がある。また,音楽教授用に五線譜を白く印刷してあるもの,グラフ教授用の方眼印刷黒板,大教室での授業用に2枚の黒板が上下しうるもの,グループ活動に便利な移動黒板など,その学習形態に応じて多様な黒板が作られている。OHP(over-head projector。拡大投写機),テレビ,ビデオなど光学的教具が普及をみているが,臨機応変に授業を展開しうる黒板の効用は,今なお大きなものがあるといえる。
執筆者:佐藤 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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