日本大百科全書(ニッポニカ) 「最適関税」の意味・わかりやすい解説
最適関税
さいてきかんぜい
optimum tariff
関税の基本的分析では、いかなる関税も国全体に純損失をもたらし、自由貿易がベストであることを示している。しかし、ある国がある輸入品の世界市場で大きなシェアを占め、その国際価格に影響を及ぼす、いわば「需要独占力」をもつような場合(いわゆる「大国」の場合)、その国が輸入品に関税を賦課し、輸入量を削減しようとすると、外国の供給者は販売量の減少を抑えるために価格を引き下げようとする。これは、課税国の交易条件を有利にし、自由貿易の場合よりも貿易利益を増し、経済的厚生を高める。こうした関税を最適関税という。最適関税率は、輸入量がゼロとなる禁止的高関税と関税のない自由貿易との間のどこかに決定され、それは輸入品の外国供給の弾力性の逆数に等しい。つまり、外国供給曲線の弾力性が低ければ低いほど最適関税率はそれだけ高くなり、逆に無限に弾力的であれば最適関税はゼロとなる。一国の貿易利益を最大にする国民的な最適関税は、外国が報復的に課税しないことを前提として成立するものであるが、しかしたとえ報復があってもなくても、世界全体としては純損失をもたらす。
[秋山憲治]