末枯(読み)ウラガレ

デジタル大辞泉 「末枯」の意味・読み・例文・類語

うらがれ【末枯】[書名]

久保田万太郎短編小説。大正6年(1917)「新小説」誌に発表落魄らくはくしていく下町の芸人たちの生活哀感を込めて描く。続編に、大正7年発表の「老犬」(のち「続末枯」に改題)がある。

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精選版 日本国語大辞典 「末枯」の意味・読み・例文・類語

うら‐がれ【末枯】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「うらがれる(末枯)」の連用形名詞化 )
  2. 草木の先の方が枯れること。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「しらとほふ小新田山(をにひたやま)の守る山の宇良賀礼(ウラガレ)せなな常葉(とこは)にもがも」(出典万葉集(8C後)一四・三四三六)
  3. うらぶれていること。わびしい様子。
    1. [初出の実例]「其処いらは、末枯(ウラガレ)の、どこか貧しい、色の褪めたやうな感じのするところだ」(出典:末枯(1917)〈久保田万太郎〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「末枯」の意味・わかりやすい解説

末枯
うらがれ

久保田万太郎の短編小説。1917年(大正6)8月『新小説』に発表。19年新潮社刊の作品集『恋の日』に収録。事業に失敗して寂しい隠遁(いんとん)生活を送る「鈴むらさん」を中心に、盲目の噺家(はなしか)せん枝を配し、時代の波に押し流された「末枯」のようなはかない下町の人たちの生活を、万太郎独自の哀感あふれる下町ことばで描き出した佳作。慶応義塾大学卒業後、一時文学的にも生活的にも行き詰まりをきたしていた万太郎にとって、これは自己の文学を確立した画期的作品であり、初期の代表作となった。続編に『老犬(ろうけん)』(1918。のちに『続末枯』と改題)がある。

[柳沢孝子]

『『久保田万太郎全集1』(1968・中央公論社)』

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