其処(読み)ソコ

デジタル大辞泉 「其処」の意味・読み・例文・類語

そ‐こ【×処/×所】

[代]
中称の指示代名詞。聞き手に近い場所、また、聞き手と話し手双方が承知している場所・事柄をさす。
㋐その場所。「―にある袋」
㋑その点。その事。「―がむずかしいところだ」
㋒その局面。「―でベルが鳴った」
㋓その程度。それほど。「―まで言うなら仕方がない」
㋔あなたのところ。
「―にこそ多くつどへ給ふらめ」〈帚木
二人称人代名詞。おまえ。そなた。
「―は今年何歳になりおる」〈魯庵社会百面相
不定称の指示代名詞。漠然とある場所をさす語。どこ。どこそこ。
「思ふどち春の山辺うちむれて―ともいはぬ旅寝してしか」〈古今・春下〉
[類語]そこらそこいらそんじょそこらそちらそっち

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「其処」の意味・読み・例文・類語

そ‐こ【其処・其所・其】

  1. 〘 代名詞詞 〙
  2. [ 一 ] 他称。
    1. 相手側の場所、もしくは話題の場所をさし示す(中称)。そのところ。その場所。
      1. [初出の実例]「其地(そこ)に宮を作りて坐(ま)しき」(出典古事記(712)上)
      2. 「海へうちいれ給ひたりけれ共、そこしもとをあさにてしづむべきやうもなかりければ」(出典:平家物語(13C前)九)
    2. 相手側の事物、もしくは話題の事物をさし示す(中称)。そのこと。その点。それ。
      1. [初出の実例]「苛(いら)なけく 曾許(ソコ)に思ひ出 愛(かな)しけく ここに思ひ出」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「しかれども此の詩にをいては妙也。そこが作者のうで也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
    3. その情況。その事態。
      1. [初出の実例]「『須貝さんが、妾を嫌ひだったら、妾だって嫌ひだわ』『まだそこ迄は行ってないさ』」(出典:華々しき一族(1935)〈森本薫〉一)
    4. 不定の場所をさし示す(不定称)。どこそこ。
      1. [初出の実例]「山のかひ曾許(ソコ)とも見えずをとつひも昨日も今日も雪の降れれば」(出典:万葉集(8C後)一七・三九二四)
  3. [ 二 ] 対称。同等または同等以下の親しい相手に対してふつう用いる。そなた。そこもと。そち。
    1. [初出の実例]「あまたものし給へど、中将とそことをこそは、宮にも上ゆるされなどし給へれば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)あて宮)

其処の語誌

[ 二 ]の対称を表わす人称代名詞としての用法平安時代から鎌倉時代にかけて多く見られるが、室町時代以降はほとんど見られなくなる。「そち」「そなた」「そのほう」「そこもと」などがこれに取って代わったと考えられる。


それ‐どころ【其処】

  1. 〘 名詞 〙 ( 下に否定の語を伴うか、「それどころか」の形で ) とてもその程度ではないの意を表わす。
    1. [初出の実例]「『さう。なぜ食べて来なかったの』『今日はそれ所(ドコロ)ぢゃなかったよ。ああお腹が空いた』」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中)

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