杭打ち機(読み)くいうちき(その他表記)pile-driver

日本大百科全書(ニッポニカ) 「杭打ち機」の意味・わかりやすい解説

杭打ち機
くいうちき
pile-driver

土木構造物や建築物の基礎杭を打撃または振動によって地中に打ち込む機械。ドロップハンマー、気動ハンマー、ディーゼルパイルハンマー、および振動パイルドライバーなどが代表的なものである。

(1)ドロップハンマー 重錘(おもり)(もんけんともいう)をワイヤロープで櫓(やぐら)の上に巻き上げ、落下させて杭や矢板を打ち込む。杭打ち機としてはもっとも古くから使用され、現在では小規模な基礎工事や補助的用途に用いられる。

(2)気動ハンマー 蒸気または圧縮空気によりピストンを上下運動させ杭を打撃して打ち込むもので、スチームハンマーまたはエアハンマーともいう。気動ハンマーは昭和初期から国産化され、近年では大型機が海上構造物用の大口径鋼管杭の打込みなどに使用されている。海外ではラムram(打撃体)重量が100トンを超す超大型機が海底油田用プラットホーム建設などに用いられ、深い海中で使用できる水中ハンマーも開発されている。

(3)ディーゼルパイルハンマー 2サイクルディーゼル機関のピストンの上下運動を杭の打撃に利用したもので、単にディーゼルハンマーともいう。1938年ドイツで発明され、日本では1954年(昭和29)に国産化された。外部に動力源を必要とせず取扱いが容易であり、強力で高能率などの利点があり、急速に普及し、打込み機械の主流をなしている。

(4)振動パイルドライバー(バイブロハンマーともいう) 杭に振動を与えて土中における杭の側面および先端の抵抗を軽減し、同時に連続的振動載荷によって杭の打込みおよび引抜きを行う。動力には電動機を用いる。

 各種機械による杭打込みは、施工時の騒音、振動が大きく、住宅密集地などではその適用を制限されることが少なくない。この対策として、ハンマー本体や杭、リーダーマストを覆う防音カバーによって遮音する方法や、低振動型のパイルドライバーなどが開発され、打撃時の騒音や振動の軽減が図られている。

 低騒音・低振動杭工法として埋込み杭工法および場所打ち杭工法が各種開発されている。埋込み杭工法には、あらかじめ地盤に掘った孔に杭を挿入する方法、杭の中空部分に削孔機を入れ掘削しながら杭を沈設する方法、油圧ジャッキにより杭を圧入する方法、高圧水ジェットを噴射して杭を地中に沈設する方法、およびこれらの併用型など多種のものがある。

 場所打ち杭工法は、掘削した孔に鉄筋を建て込み、コンクリートを打設して大口径の杭を造成する工法であり、施工機械および掘削方式によって各種の工法がある。代表的なものに、オールケーシング工法(ベノト工法)、アースドリル工法、リバースサーキュレーションreverse circulation工法(リバース工法)などがある。

 オールケーシング工法用大口径掘削機は、鋼製パイプ(ケーシングチューブ)を揺動圧入しながら内部をハンマーグラブバケットで掘削するもので、施工中周辺地盤に与える影響が少ない特長がある。アースドリル機は円筒形の回転バケットで掘削を行い、崩壊のおそれのある地質の場合は安定液を孔中に満たして孔壁の地盤を押さえている。リバースサーキュレーション工法用掘削機は、掘削孔中に水を満たし、静水圧によって孔壁地盤の崩壊を防ぎながら回転ビットにより地盤を切り崩し、連続的に掘削土砂を排出する方式の機械である。

 これらの場所打ち杭用掘削機は、近年順次、より大径、長尺の場所打ち杭の施工を可能にしており、直径数メートル、深さ100メートル以上の掘削が可能な機種もある。掘削対象地盤についても、一般土砂から岩盤まで広範囲な地質への適用が可能になった。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]


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