東トルキスタンイスラム運動(読み)ひがしトルキスタンイスラムうんどう

百科事典マイペディア の解説

東トルキスタンイスラム運動【ひがしトルキスタンイスラムうんどう】

ウイグル族による分離主義過激組織。東トルキスタンとは中国新疆ウイグル自治区の分離独立を主張するウイグル族が〈新疆〉(しんきょう)という呼称を嫌い〈東トルキスタン〉という呼称を用いることからくる。1997年,中国政府に逮捕された後に国外へ逃亡した最高指導者ハッサン・マフスームが,アブドゥカディル・ヤプケンとともに設立し,組織名を〈トルキスタンイスラム党〉(TIP)と名乗った。アフガニスタンアル・カーイダ及びタリバーンと共闘関係にあったとされる。2003年12月中国政府はTIPを〈東トルキスタンイスラム運動〉(ETIM)の名でテロ組織に指定国連と米国政府もテロリスト集団に指定した。2003年10月,パキスタン当局は,パキスタン西部のアル・カーイダ関連施設を攻撃した際に,マフスームを殺害したと発表。一方,2004年,ヤプケンはトルコに亡命したといわれる。マフスームの死後,アブドゥル・ハクが最高指導者となったが,2010年2月パキスタン北ワジリスタン地区で,爆撃により死亡した。ETIMは〈タリバーン〉統治下のアフガニスタンの訓練キャンプでメンバーを訓練したとされる。2009年10月には,アル・カーイダ幹部が,東トルキスタンを主題とした,中国政府への〈ジハード〉を呼び掛けるビデオ声明を出している。2011年7月,新疆ウイグル自治区ホータン及びカシュガルで,警察官及び一般住民を狙った複数の襲撃事件が発生,その後,同年9月,TIPの指導者を名のる者による犯行声明(映像)がインターネットに掲載されているのが確認された。2013年11月の天安門自動車爆破事件,2014年3月昆明駅で無差別暴力事件,さらに2014年4月,習近平国家主席が新疆ウイグル自治区を視察した直後ウルムチの駅で爆発物と刃物によるテロ事件が発生,中国政府は頻発する反政府テロ活動を新疆ウイグル自治区の〈分裂主義者の組織的暴力テロ〉としているが,いずれの事件も詳細は明らかにされておらず不明である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

東トルキスタン・イスラム運動
ひがしとるきすたんいすらむうんどう
East Turkestan Islamic Movement

東トルキスタン(中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区)の中国からの分離独立を目ざす独立運動組織。略称ETIM。ウイグル人を中心とした過激派イスラム主義組織である。中国政府ばかりでなく、アメリカ政府、国際連合からも「テロ組織」に指定されている。

 1997年、中国政府に逮捕された後に国外へ逃亡したウイグル人指導者、マフスームHasan Mahsum(1964―2003)が中心的な存在であったが、マフスームは2003年にパキスタン政府軍によって殺害され、その後のETIMは複数の指導者により率いられているとされる。アフガニスタンのアルカイダタリバンと共闘関係にあるとみられ、中国国内のメディアによると、同組織はウイグル人青年をアフガニスタンのキャンプに送り込み、テロ活動の訓練を施しているという。

 2011年7月に起きた、新疆ウイグル自治区のホータンおよびカシュガルで警察官および一般住民をねらった複数の襲撃事件や、2013年10月に起きた、天安門広場に自動車が突入したのち炎上し多数の死傷者が出た事件について、同組織が犯行声明を発表している。

[矢板明夫 2019年4月16日]

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デジタル大辞泉プラス の解説

東トルキスタン・イスラム運動

《Eastern Turkistan Islamic Movement》東トルキスタン(新疆ウイグル地区)の中国からの分離独立を目標に掲げる武装組織。1997年頃の結成とされる。タリバン、アルカイダなどとの関係が指摘されている。2002年9月11日、国連制裁対象に指定。

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