ウルムチ(読み)うるむち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルムチ」の意味・わかりやすい解説

ウルムチ
うるむち / 烏魯木斉

中国、新疆(しんきょう)ウイグル自治区中部、ウルムチ川河畔にある地級市で、同自治区の首府略称は烏(う)、旧称迪化(てきか)。天山(てんざん)山脈主脈とボグダ山系との間、達坂(ダーバン)城凹地の北部にある。7市轄区、1県を管轄する(2017年時点)。人口243万0315(2010)。住民にはウイグル、漢民族、カザフなどが多い。年平均気温は約7℃、年降水量は約250ミリメートル。内陸性気候で、年間を通して乾燥する。

[駒井正一・編集部 2018年1月19日]

歴史

ウルムチとはモンゴル語で「美しい牧場」を意味する。古く漢代には車師(しゃし)後国の中心であり、また唐代の庭州、北庭都護府もこの近くにあった。現在の町の歴史は比較的新しく、1755年、清(しん)朝がジュンガル王国征服のために、ここに軍営を設け城塞を築いたことから始まる。当時ここに紅色の垣をもつ関帝廟(かんていびょう)がつくられたことから紅廟子ともよばれた。最初ここに天山東部(東路)を監督する烏魯木斉(ウルムチ)都統が置かれた。1773年ウルムチは迪化州と改められ、この地方の交易、交通の中心として発展した。1884年、準部、回部が新疆省として再編成されるとその省都となり、迪化府となった。

 中華人民共和国成立後の1954年ウルムチ市となり、さらに1957年新疆省が新疆ウイグル自治区となると、自治区人民委員会が置かれた。1963年にはクムルからの鉄道も通じ、蘭新(らんしん)線が完成した。1990年代ごろからは、ソ連崩壊に伴う中央アジア諸国の独立にも刺激され、新疆ウイグル自治区の独立運動が活発化(新疆ウイグル問題)。2009年にはウルムチで大規模な騒乱が起こり、多数の死傷者が出た。

[森川哲雄・編集部 2018年1月19日]

産業・交通

中央アジア諸国との貿易の拠点であるほか、石油化学冶金紡績、機械、医薬品などの工業を中心に近代化が進んでいる。テュベテイカ(中央アジアの伝統的な帽子)、カーペットなどの手工業も盛ん。特産物として塩、羊肉、馬乳酒、ワインを産する。新疆大学や中国科学院新疆生態地理研究所なども設けられている。

 蘭新線や北疆線(ウルムチ―阿拉山口(あらさんこう))が通じるほか、クチャや奇台(きだい)に通じる自動車道の起点で、南東には達坂城区や塩湖があり、トゥルファン盆地への交通の要所を占める。市街北西部にはウルムチ地窩堡(ちかほう)国際空港があり、中央アジア諸国への空の玄関口となっている。

[駒井正一・編集部 2018年1月19日]

文化・観光

イスラム文化が支配的な地域で、毎年ラマダーン(断食月)明けには祝祭イード・アル・フィトルが行われるほか、イスラム文化圏特有の市場(いちば)である新疆国際バザールもある。

 市東部には、世界自然遺産「新疆天山」(2013年登録)の構成資産であるボグダ山がそびえ、中腹にある天池の絶景は有名。市街にある新疆ウイグル自治区博物館は、楼蘭(ろうらん)や哈密(はみ)(クムル)、チャルチャンで発見されたミイラを展示していることで知られる。

[周 俊 2018年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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