東国輿地勝覧(読み)とうごくよちしょうらん

改訂新版 世界大百科事典 「東国輿地勝覧」の意味・わかりやすい解説

東国輿地勝覧 (とうごくよちしょうらん)

朝鮮,李朝時代の地誌。1481年(成宗12),王命により50巻が編纂され,数回の改訂増補ののち1530年,《新増東国輿地勝覧》55巻として完成した。全国総図と各道地図を掲げ,中国の《大明一統志》の影響をうけて,朝鮮全土の郡県ごとに建置沿革,属県,郡名,姓氏,風俗,形勝,山川土産城郭,熢燧,学校,駅院,楼亭橋梁仏宇祠廟陵墓,古跡,名宦,人物,題詠などの項目に分けて記述。《周官六翼》など,本書編纂当時に存在してその後失われた書籍も引用し,15~16世紀朝鮮の研究に不可欠の史料である。朝鮮地誌の代表作として評価が高く,後代の地誌・地方誌(邑誌)に大きな影響を与えた。
地誌[朝鮮]
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東国輿地勝覧」の意味・わかりやすい解説

東国輿地勝覧
とうごくよちしょうらん
Tongguk-yǒji-sǔngram

朝鮮,朝鮮王朝 (李朝) 時代に官撰された文化史的地誌。朝鮮王朝では王朝の基礎が成立すると,中国の『大明一統志』などにならって全道の地誌の編纂に着手し,まず世宗 14 (1432) 年に,尹淮,申檣らによって『新撰八道地理志』 (8巻) を撰進し,それが『世宗実録地理志』に編入された。さらに成宗 12 (81) 年に第1稿が,同 18年に改撰の『新撰輿地勝覧』 (55巻) ができた。それらはさらに手を加えられ,16世紀前半の中宗 25 (1530) 年に,李こうらに命じて増補させたものが『新増東国輿地勝覧』 (55巻) として刊行され,光海君3 (1611) 年に多少改訂された。京都,漢城,開城府のほか全8道の各州,府,郡,県について略図を付し,建置の沿革,郡名,姓氏,風俗,形勝,山川,土産,城郭,関防,烽燧宮室,楼亭,学校,駅院,橋梁,部坊,公廨,仏宇,祠廟,陵墓,古跡,名宦,人物,孝子,烈女,題詠など 26の項目があり,重要な文献の引用だけでなく,詩文や伝承記録まで包括されていて,文化史の史料としても重要な地誌である。 1958年大韓民国で古典刊行会から洋装本1冊として出版された。

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