国指定史跡ガイド 「東大寺領横江荘遺跡」の解説
とうだいじりょうよこえのしょういせき【東大寺領横江荘遺跡】
石川県白山市横江町、および金沢市上荒屋にある荘園に関する遺跡。指定名称は「東大寺領横江荘遺跡 荘家跡(しょうけあと) 上荒屋遺跡(かみあらやいせき)」。横江荘は、奈良時代から平安時代の初めに全国的に広がった初期荘園の一つ。荘家跡は手取川が形成した扇状地の北東の端に立地し、発掘調査により、南に庇をもつ最大の東西棟の掘立柱建物跡を中心に、一群の掘立柱建物跡が検出された。瓦は一片も発見されなかったが、須恵器(すえき)・黒色土器・火鑚臼(ひきりうす)などの出土品はほとんど平安初期のものであり、荘園の管理事務所を示す「三宅」と記している墨書土器底片が発見され、荘家跡と推定された。正倉院の文書などに記された東大寺領の荘園の荘家を具体的に知ることができる重要な遺跡として、1972年(昭和47)に国の史跡に指定。荘園の遺跡としては最初の指定であり、2006年(平成18)に上荒屋遺跡が追加指定を受け、名称変更された。金沢市西部にある上荒屋遺跡も荘園関連施設の一部と考えられ、荘家跡や工房跡、船着き場跡などが見つかり、墨書土器が1000点以上、荘園に出入りした物資に付けられた付札(つけふだ)木簡も出土している。一帯は史跡公園として整備され、発見された建物跡などの位置が表示されている。荘家跡へは、JR北陸本線野々市駅から徒歩約20分。上荒屋遺跡へは、JR北陸本線松任駅から車で約10分。