墨書土器(読み)ボクショドキ

世界大百科事典 第2版の解説

ぼくしょどき【墨書土器】

土師(はじ)質や須恵質の土器の蓋や底に,墨で文字を書いたものや花鳥・人物などの絵を描いたものをいう。古代では主として宮殿跡や寺院跡から出土するが,中・近世では集落跡や城跡などから多く出土する。平城宮跡出土品から墨書の内容をみると,器名〈高佐良(たかさら)〉,用途〈供養〉,食品名〈清菜〉,役所名〈酒司〉〈主馬〉,人名〈醴太郎〉などに分類できる。また,吸水性のある土師器(はじき)は墨のりがよいとみえ,文字を練習した習書が多い。

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大辞林 第三版の解説

ぼくしょどき【墨書土器】

文字や人面などを墨書した土器。日本で七~一〇世紀頃まで盛行。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

墨書土器
ぼくしょどき

土器に文字を墨書したものと、人の顔を描いたもの(人面墨書土器)と2種類ある。
 墨書文字には、坂田寺跡(奈良県明日香(あすか)村)下層出土の土器に「知識」と書かれた文字をはじめ、「掃守(かにもり)」「宇尼女ッ伎(うねめっき)」などと記された藤原宮跡(橿原(かしはら)市)発見の墨書土器群などが初現期のものと考えられ、7世紀代から10世紀代ころまで盛行するが、以後急速に衰退する。その内容は、官衙(かんが)名、寺名、官職名、地名、人名など所属・所有を示すもののほかに「鳥(わん)」「油坏(あぶらつき)」など用途を記したもの、また、「福饒」「平安」のごとく吉祥文字と考えられるもの、そのほかに公文書の下書きや手習い、戯(ざ)れ書きなどもある。しかし、一字銘や記号のものが一般的で、意味不明瞭(ふめいりょう)のものが非常に多いが、それらも以上の分類のいずれかに属するものであろう。これらのなかには、まれに片仮名、平仮名の文字もみられ、国字発達の跡を知る好資料であるとともに、紀年銘によって年代が判定されたり、「志太(しだ)」「大領」の墨字から志太郡衙跡との決定をみるなど、考古学研究上の重要な鍵(かぎ)となる場合がある。
 人面を墨書した土器は、外側の器面を顔に見立て、輪郭を省略して耳、眉(まゆ)、目、鼻、口のみを描いたものが一般的であるが、なかにはひげをかくなどして表情に変化がある。一つの土器に一面もしくは二面、四面と偶数倍に描かれたものが多く、ときには底部にかかれる場合もある。時代は8世紀から11世紀に及ぶと思われるが、9世紀代ころまでが最盛期で、時代が下ると、薩摩(さつま)国庁跡発見のもののごとく、画法も意味も異なるものが含まれてくる。
 出土分布は畿内(きない)に集中的であるが、広く岩手県南部から北九州に及び50か所内外の発見例(1985)が知られ、斎串(さいぐし)などとともに川、溝、池沼など水辺に多く検出される。10世紀に編纂(へんさん)された『延喜式(えんぎしき)』に、6月と12月に執り行われる「大祓(おおはらえ)」の宮廷儀式には、坩(かん)形土器を用いて川に邪気を祓(はら)い流す行事のあることが記されていて、状況がよく符合することから、道教的色彩の強い古代祭祀(さいし)に関連する遺物と考えられる。[小出義治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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