日本大百科全書(ニッポニカ) 「株主資本等変動計算書」の意味・わかりやすい解説
株主資本等変動計算書
かぶぬししほんとうへんどうけいさんしょ
株式会社の純資産が1年間にどれだけ変動したかを示す財務報告書。株主資本等変動計算書と「等」をつけるのは、貸借対照表の純資産の部には、会社の所有者の持分である株主資本のほかに、持ち合い株式の時価評価差額やストックオプションなどの新株予約権が含まれるからである。
株主資本等変動計算書は、2006年(平成18)の会社法の施行に伴って作成することが求められるようになった。財務諸表のなかではもっとも新しい報告書である。それ以前は、類似したものとして留保利益の積立て・取崩しの状況をおもに示す利益処分計算書が作成されていた。しかし会社法の規定では、株主総会等の決議により、いつでも剰余金の配当や株主資本の項目相互間での振替えができるようになった。また、持ち合い株式の時価評価差額のように、損益計算書を経由しないで貸借対照表の純資産の部に直接計上される項目も増加した。その結果、純資産の変動要因が多様化したため、貸借対照表の純資産の各項目が事業年度中に、どのような理由でいくら変動したのかをきめ細かく把握する必要性が高まった。これが、株主資本等変動計算書が貸借対照表および損益計算書と並ぶ第三の財務諸表として新たに加えられた理由である。
株主資本等変動計算書に記載する項目の範囲については、国際的な会計基準との調和の観点から、株主資本だけでなく、時価評価差額や新株予約権などを含む純資産の部のすべての項目とされている。ただし、株主資本とそれ以外の項目とでは変動理由ごとの金額について情報の有用性が異なることや、株主資本以外の各項目を変動理由ごとに表示することによる事務負担の増大を考慮して、表示方法に差を設けることにされた。まず、株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式)の各項目は、前期末残高・当期変動額・当期末残高に区分し、当期変動額は変動理由ごとにその金額を表示する。次に、株主資本以外の項目は、やはり前期末残高・当期変動額・当期末残高に区分するが、当期変動額は変動理由ごとではなく純額で表示すればよいことになっている。
[濱本道正]