株式買取権付社債(読み)かぶしきかいとりけんつきしゃさい

改訂新版 世界大百科事典 「株式買取権付社債」の意味・わかりやすい解説

株式買取権付社債 (かぶしきかいとりけんつきしゃさい)

社債株式買取権が付与されたもの。株式買取権を与える証書を〈ワラントwarrant〉というのでワラント社債ともいう。株式買取権とは,一定の期間(期間の定めがないこともある)内に,一定価格で一定数量の社債発行会社の株式を買い取ることができる権利である。

 株式買取権付社債の一つに新株引受権付社債がある。これは,社債の償還期限内の一定の期間に一定の数または額の新株の発行を会社に対して請求することができる権利が付与された社債である。新株引受権付社債と転換社債とを比べると,どちらも新株引受権,転換権というスイートナー(甘味剤)が社債に付与されており,投資に魅力を与え,会社の資金調達を容易にする点で類似した経済的機能を有する。しかし新株引受権付社債の場合には,原則として,新株引受権の行使によって株式を取得するが,依然として社債は残る。一方,転換社債の場合には,転換権の行使によって株式を取得し社債は消滅する。この点が両者の根本的な違いである。

 日本では,1981年の商法改正により,82年10月1日以後,新株引受権付社債の発行が制度化されている。日本で導入された新株引受権付社債の概要はつぎのとおりである。(1)分離型と非分離型 新株引受権付社債は,新株引受権を社債から分離して譲渡することができる分離型と分離して譲渡することができない非分離型の2型式がある。分離型の新株引受権付社債の場合は,新株引受権が証券に化体し,独立の有価証券(新株引受権付証券)として有利に転売可能なことから,欧米の発行例においては,現在では分離型が圧倒的多数を占めており,最近は日本でも分離型が多い。(2)代用払込みの有無 新株引受権行使の対価は,原則として現金によって払い込む。ただし,会社が認めれば,現金払込みに代えて社債金額の振替によることもできる。これを代用払込みという。代用払込みが行われれば,転換社債と同様に,社債が株式に転換し社債は消滅する。(3)付与比率 新株引受権付社債の場合,社債金額の範囲内で会社所定の割合だけ新株式を引き受けることができる。この社債金額に対する新株引受金額の比率を付与比率といい,社債金額の範囲内であれば,会社は自由に設定することができる。

 欧米諸国,とくにアメリカでは株式買取権付社債は発達している。日本の新株引受権付社債と欧米流の株式買取権付社債の違いは,前者では取得の対象となる株式が社債発行会社の新株に限られるのに対して,後者では社債発行会社の新株,既発行株,他社の新株,既発行株のどれでも可能な点にある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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