日本大百科全書(ニッポニカ) 「根こぶ病」の意味・わかりやすい解説
根こぶ病
ねこぶびょう
ハクサイなどのアブラナ科野菜の根が、変形菌類に属する原始的な菌であるプラスモディオフォラ・ブラシケーPlasmodiophora brassicaeの寄生を受け、こぶ状に著しく肥大する病気。この病気にかかると地上部の生育は悪くなり、葉は初期には日中萎凋(いちょう)する程度であるが、病勢が進むと黄変し落葉する。このような株の根は肥大してこぶ状になっているが、こぶの組織内には病原菌の変形体が形成され、のちに多数の休眠胞子になる。休眠胞子は病組織が崩壊すると土壌中に分散する。休眠胞子は新しくアブラナ科植物が作付けされると、地中で発芽して鞭毛(べんもう)をもった遊走子を生じ、根の表皮、根毛から組織内に侵入、鞭毛を失ってアメーバ体となり、のちに変形体となる。この菌は細胞壁がなく、また菌糸体もないきわめて原始的な菌である。近年ハクサイその他地域特産の漬菜類の栽培が集約化し、連作されることが多いため、本病の発生も多くなり、また防除が困難なため、もっとも重要な病害となっている。発病地では連作を避ける。また酸性土壌で発病が多いので石灰を施用するほか、カーバムナトリウム塩剤(「キルパー」)、ダゾメット剤(「バスアミド」)、フルアジナム剤(「フロンサイド」)、フルスルファミド剤(「ネビジン」)などの殺菌剤を施用して防ぐ。
[梶原敏宏]