改訂新版 世界大百科事典 「極限等級」の意味・わかりやすい解説
極限等級 (きょくげんとうきゅう)
limiting magnitude
天体望遠鏡で検出することのできる最微光星の等級。検出器としては眼視のほかに写真,光電管,撮像素子などが用いられる。検出の限界は検出器の出力(信号S)とそのゆらぎ(雑音N)との比がS/N3のときで,これ以下では星と雑音の区別がつかない。信号Sは望遠鏡の口径Dの2乗と積分時間Tとの積に比例する。雑音Nは小口径望遠鏡では検出器の雑音,口径が大きくなると星自身の光のゆらぎ(ショット雑音)で決まる。さらに検出可能な星の明るさが暗くなって夜空の明るさ,あるいはそれ以下になると雑音は夜空からの光のゆらぎで決まる。一般に雑音Nは積分時間Tの平方根でしか増さない。また検出器雑音は口径に無関係であり,光のゆらぎが影響する場合にはDに比例するから,S/Nは前者ではD2\(\sqrt{T}\)に,後者ではD\(\sqrt{T}\)に比例しており,望遠鏡の収差,空気の不安定さによる星像の大きさや夜空の明るさにも大きく依存する。
執筆者:山下 泰正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報