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榀布 しなぬの

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世界大百科事典 第2版の解説

しなぬの【榀布】

科布,志奈布とも書く。シナノキの皮をはいで細くさいて糸につむぎ,これをいざり機(地機)で織った布。通常〈まだ布〉とか〈まんだ布〉とかいわれ,茶褐色の自然色をもつ,強い粗い感じの布である。農衣や山着としても用いられたが,肌ざわりが非常にかたいのであまり需要がなくなり,山形・新潟県境の一部などでわずかに生産されているにすぎない。用途も衣料としてはほとんどなく,近年まで東北地方の田舎で粗く織ったものを蒸籠(せいろう)の中に敷いたり,水に強いので魚釣りの魚袋にしたりして用いていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


しなぬの

科布とも書く。シナノキ、マダノキなどとよぶ喬木(きょうぼく)の靭皮(じんぴ)繊維から績(う)んだ糸で織った赤褐色の粗布。シナフ、シナダ、ノノなどともいう。製法は、直径10~20センチメートルくらいの木枝に傷を入れて皮をはぎ、水中で表面の鬼皮を取り除いたのち、乾燥して保管される。この原料を績むときには、一昼夜水に浸(つ)け、釜(かま)で煮たのち、皮を細かく裂いて績む。製織には地機(じばた)(居座機(いざりばた))を使い、仕上げはなにもしない。
 以前には、衣類、蚊帳(かや)、酒やしょうゆの漉(こ)し袋、穀物用の袋として広く使われたが、現在では新潟県村上(むらかみ)市雷(いかずち)、福島市飯坂(いいざか)町茂庭(もにわ)、山形県鶴岡(つるおか)市越沢などで、わずかに生産されるにすぎない。[角山幸洋]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
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世界大百科事典内の榀布の言及

【織物】より

…平地が少なく植物の繁茂する日本のような地理的条件のもとでは,はじめは野生のコウゾ(楮),カジノキ(榖),クズ(葛),ヤマフジ(山藤),シナノキ(科)などの樹皮繊維が利用され,その後自生のチョマ(苧麻)やタイマ(大麻)の類が栽培されて,麻布が織られるようになったと考えられる。近年まで一部の地方では樹皮繊維で織物が作られて衣料となっていたし,現在もわずかながら榀布(しなぬの)は新潟県山北町大字雷や山形県温海町関川などで,葛布は静岡県掛川で織られている。しかし,樹皮繊維は堅く粗々しいものであったから,川にさらし,灰汁(あく)で煮,槌でたたいて繊維をほぐすという採糸の苦労があり,いつしか一般的でなくなり,やわらかく,紡ぐことのたやすいチョマやタイマが植物繊維の主要な原料となってきたのである。…

※「榀布」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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