5世紀ころから日本で使用されたとみられる手織機で,いざり機,下(した)機,神代(じんだい)機とも呼ばれた。これより古い原始機では機台がなく,筬(おさ)はいちばん後方にあり,経糸(たていと)の幅および間隔を一定にするために使用されたが,地機では経巻具(たてまきぐ)を機台に取り付けて後ろを高くしてあり,筬は綜絖(そうこう)の前方に置かれ,緯(よこ)打ちに使用される。布巻具を腰当てで体につけ,座って織るので,経糸はかなり傾斜している。このため有機台傾斜機に分類される。経巻具は緒巻(おまき)または千切(ちぎり),布巻具は千巻(ちまき)とも呼ばれる。綜絖は依然として単綜絖で,中筒(なかづつ)の前方に置かれ,平織しか作ることはできない(一部ではもじり綜絖も用いられた)。しかし,てこあるいははねつるべの機構で,足で綱(足縄)を引いて綜絖を上下し,中央のくぼみに緯糸を納めた大杼を用い,両手で緯入れすることができる。このため原始機より緯入れ,緯打ちの能率が向上した(緯打ちは大杼と筬の両方で行う)。地機は麻あるいは樹皮繊維の布を作るために使用されたが,やがて絹にも一部使用され,16~17世紀には綿用の織機としても普及した。現在,越後縮(ちぢみ)(苧麻布(ちよまふ))や,結城紬(ゆうきつむぎ)など,一部の地方で地機の技術が保存されている。
→織機
執筆者:近田 淳雄
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…この改良型いざり機は,現在では結城紬や越後上布の製織ぐらいにしか残っていないが,かつては農村の機織のほとんどがこれであった。いざり機は織り手が地面や床面に近く,低く座して作業をするところから,地機(じばた)とか下機(しもばた)ともいわれ,さらに古い機という意味で神代機(じんだいばた)の名もある。やがて高級織物織成の欲求にしたがって綜絖装置は工夫改善され,上に糸を引き上げる綜絖と下に糸を引き下げる綜絖と2枚あるいはそれ以上の綜絖が装置されるようになり,またその操作もペダル式の踏木によって行われるに至った。…
…経糸やよこ糸には羊毛のほか,細く堅牢な綿もよく使われ,高級品には絹も用いる。
[織機,道具]
絨毯の織機は,経糸を垂直に張る竪機(たてばた)(高機)と経糸を地面すれすれに水平に張る水平機(地機)とに大別される。竪機は都市や農村の定住生活,水平機は遊牧民の移動生活で主として使われている。…
…しかし,原始機にも単綜絖はあったとみられており,この綜絖の発明は密度の大きい織物を作りやすくした点で,その意義は大きい。5世紀になると現存する地機(じばた)に近いものが使用されるようになった。弥生時代の織機に機台をつけ,足で縄を引いて開口するもので,刀杼の中央のくぼみに緯入れ具を入れた大杼で緯入れを行えばよく,能率が著しく向上した。…
…次に,経糸を作業に便利なように水平においたものが水平型織機である。この平面式の織機の代表的なものに,腰帯式といわれる地機(じばた)がある。2本の平行棒の間に経糸を張りわたし,先の棒の端は木や柱に縛りつけ,手前の棒は自分の腰に革帯などでとりつける。…
※「地機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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