橘小夢(読み)タチバナ サユメ

20世紀日本人名事典 「橘小夢」の解説

橘 小夢
タチバナ サユメ

大正・昭和期の挿絵画家



生年
明治25(1892)年

没年
昭和44(1969)年

出生地
秋田市

本名
加藤 〓

経歴
漢学者の長男として生まれる。生来病弱で幼時から物語や奇談、絵草紙、錦絵を好んだ。上京後洋画黒田清輝に学んだのち川端画学校で日本画を川端玉章に師事。次第に美人画に傾斜し挿絵画の道に。大正から昭和10年代にかけ日本の物語や民話、絵草紙、錦絵、また歌舞伎などの芸能をもとに、魔性や官能を魅惑的、退廃的に描く挿絵画家として活躍したが、その妖美な画風は戦時下では受け入れられず発禁処分の対象ともなった。晩年は療養生活の傍ら家族宛てに「地獄太夫」などの屏風大作を遺した。平成5年直木賞作家の皆川博子らの協力を得て長男・加藤真彦により所蔵品を集めた初の回顧展・橘小夢展が東京・文京区の弥生美術館で開催された。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「橘小夢」の解説

橘小夢 たちばな-さゆめ

1892-1970 大正-昭和時代前期の挿絵画家。
明治25年10月12日生まれ。洋画を黒田清輝(せいき),日本画を川端玉章にまなぶ。雑誌や小説の挿絵を中心に,版画,日本画を手がける。民話,伝説モチーフに女性の魔性を表現,たびたび発行禁止処分をうけ,「幻の画家」とよばれた。昭和45年10月6日死去。77歳。秋田県出身。本名は加藤凞(ひろし)。版画に「水魔」,挿絵に矢田挿雲(そううん)「江戸から東京へ」。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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