橘直幹(読み)たちばなのなおもと

改訂新版 世界大百科事典 「橘直幹」の意味・わかりやすい解説

橘直幹 (たちばなのなおもと)

平安時代の漢詩人。生没年不詳。長守の子。唐名橘鳳(きつほう)。対策及第の後に大内記文章博士に任ぜられたが,954年(天暦8)欠員となっていた民部大輔の兼任を望んで村上天皇に奉った申文(もうしぶみ)は,なかの一句が天皇の機嫌を損じたが名文として知られ,後年内裏炎上の際に,天皇が申文を取り出したか否かを臣下に問うたという説話を生み,これを絵巻化した《直幹申文絵詞》によって文才喧伝された。その後式部大輔となり撰国史所に宿直した。内裏の《坤元録屛風(こんげんろくびようぶ)》に詩を撰進し,天徳闘詩合の作者となる。《直幹草(なおもとそう)》は散逸
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「橘直幹」の意味・わかりやすい解説

橘直幹
たちばなのなおもと

生没年未詳。平安中期の漢詩人。937年(承平7)対策に及第。東宮学士、大学頭(だいがくのかみ)、文章博士(もんじょうはかせ)などを歴任、従(じゅ)四位下式部大輔(しきぶのたいふ)を極官とする。949年(天暦3)大江朝綱(おおえのあさつな)、菅原文時(すがわらのふみとき)と「坤元録屏風詩(こんげんろくびょうぶし)」を献じるなど当代一級の文人であった。954年、民部大輔の官を望んで起草、奏上した申文(もうしぶみ)(『本朝文粋(もんずい)』)は、その不穏当な辞句にもかかわらず村上(むらかみ)帝の賞玩(しょうがん)するところとなったとする説話は広く喧伝(けんでん)され(『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』『十訓(じっきん)抄』『江談(ごうだん)抄』)、絵巻『直幹申文絵詞(えことば)』(13世紀中ごろ)を生んだ。

[渡辺秀夫]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「橘直幹」の解説

橘直幹 たちばなの-なおもと

?-? 平安時代中期の官吏,漢詩人。
橘公統(きんむね)にまなび,天暦(てんりゃく)2年(948)文章(もんじょう)博士となる。8年民部大輔(たいふ)に任ぜられるよう提出した申文(もうしぶみ)が,のちの「直幹申文絵詞(えことば)」の材料となった。
格言など】石に触るる春の雲は枕の上に生(な)る 嶺を銜(ふく)む暁の月は窓の中(うち)より出(い)ず(「和漢朗詠集」)

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