申文(読み)モウシブミ

デジタル大辞泉 「申文」の意味・読み・例文・類語

もうし‐ぶみ〔まうし‐〕【申文】

下位の者から上位の者へ、願い事などを書いて差し出す文書中世には多く申し状とよばれた。奏文
「入道殿下の御前に、―をたてまつるべきなり」〈大鏡・道長上〉
特に平安時代以後、官人が、叙任官位昇進を望むとき、その理由を書いて朝廷に上奏した文書。款状かんじょう
「いみじうこほりたるに、―もてありく」〈・三〉

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精選版 日本国語大辞典 「申文」の意味・読み・例文・類語

もうし‐ぶみまうし‥【申文】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古文書様式呼称の一つで広く上申文書をいう。多く個人が官庁、あるいは上位者に差し出すもの。令制の解(げ)系統であって、解の書出部分に「…解申」という句がはいるところから、解文とも申文・申状とも呼ばれる。内容は何らかの非違を訴えるもの、窮状を訴え改善を嘆願するものなどが多い。中世には多く申状と呼ばれる。
    1. [初出の実例]「民明直(をさをさ)しき心に、国土(くに)の風(のり)を懐ふこと有て切(たしか)に諫むる陳䟽(マウシフミ)を設置に納れよ」(出典:日本書紀(720)大化二年二月(北野本訓))
  3. 特に、平安以降、官人が叙位任官のために提出する文書。希望する官職を挙げ、傍例をあげ、自分の経歴を書き、その官職に就任するに自分がいかにふさわしい人間であるかを記して自薦する。中世以後、申文とはこの種の文書をいうようになった。款状(かんじょう・かじょう)
    1. [初出の実例]「伊予介善文申文右少弁持来、即示奏之由返付」(出典:九暦‐九暦抄・天暦二年(948)三月一二日)

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改訂新版 世界大百科事典 「申文」の意味・わかりやすい解説

申文 (もうしぶみ)

古文書様式の一つ。上申文書で,下位のものが上位に対して事柄を〈申上る〉文書ということからこの名があり,申状ということもある。公式様(くしきよう)上申文書である(げ)が冒頭に〈何某解申……事〉とあるのが,しだいに〈何某申……事〉と変化し,名称も解(解文)から申文に変わったといわれる。中世以降は申文というと,とくに官人が叙位・任官や官位昇進を希望して,朝廷に申請する款状(かじよう)をさしていうようになった。この申文は個人のもののほか官司が所属の官人の昇進や兼職を推薦するものもあった。申文は希望の官位を書いて提出され,除位・除目のときに参考にされ,採用された文書は成柄(なりがら)と称された。本文には自己の経歴・業績などや,一般的な官位昇進の例を記したものもあり,伝記資料や公家の官職制度の実態を知る資料ともなるものがある。同じ上申文書でも訴訟のために提出される文書の場合はとくに申状と称された。平安時代まではまだ〈解〉の文字が文書上にあり,解文・解状ともいわれたが,平安末期ごろから本文書止(かきどめ)の文言が〈仍注事状,以解〉から〈言上如件,以解〉となり,その後は〈言上如件〉だけになり,〈申状如件〉というのもあらわれるようになり,申状の語が定着した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「申文」の意味・わかりやすい解説

申文
もうしぶみ

古文書の一様式。下位の者から上位の者に提出する文書をさし,書出しに「申」の字がある。公式令に定める「」の変容したもの。しかし,倉時代以降,申文なる名称は貴族の官位申請文書だけに用いられ,一般の上申文書は申状と称されるにいたった。

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普及版 字通 「申文」の読み・字形・画数・意味

【申文】しんぶん

上申書。

字通「申」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「申文」の意味・わかりやすい解説

申文
もうしぶみ

申状

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世界大百科事典(旧版)内の申文の言及

【款状】より

…古代・中世の古文書様式の一つ。申文(もうしぶみ)ともいう。官人・僧侶が位階や官職の叙任や昇進を望むため,自己の経歴・功績,あるいは祖先のことを書いた自薦の文書。…

※「申文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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