和漢朗詠集(読み)わかんろうえいしゅう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

和漢朗詠集
わかんろうえいしゅう

平安時代中期の歌謡集。『倭漢朗詠集』とも書く。藤原公任 (きんとう) 撰。2巻。長和2 (1013) 年頃成立。当時貴族や女房たちに朗詠されていた漢詩文詩句章句をもとに,和歌を合せて分類配列したもので,藤原教通を婿にしたときの引出物として編纂したと伝えられる。詩句,章句 588首,和歌 216首を上巻四季部 39項,下巻雑部 30項に分類するが,勅撰和歌集や中国の類書部立にならっている。中国人の作品では白楽天 (白居易) のものが圧倒的に多く,大江維時の『千載佳句』を資料にしている。日本人のものでは菅原文時大江朝綱ら菅江両家を中心とする翰林 (かんりん) の詩人の作が多い。和歌は『古今和歌集』から『拾遺和歌集』にいたる代表的歌人のものが多い。艶麗優雅な作品が多いのは当時の宮廷貴族の美意識を示すものといえる。本書の詩句,章句は朗詠によって広い階層に浸透していくとともに中世の軍記物語や謡曲などの詞章に引用されて仮名文学にも大きな影響を及ぼし,新しい和漢混交文の成立に貢献した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

わかんろうえいしゅう〔ワカンラウエイシフ〕【和漢朗詠集/倭漢朗詠集】

平安中期の詩歌集。2巻。藤原公任撰。長和2年(1013)ごろの成立か。朗詠に適した白居易などの漢詩文の秀句約590首と紀貫之(きのつらゆき)凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)などの和歌約220首を、四季・雑に分類して収めたもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

和漢朗詠集【わかんろうえいしゅう】

平安中期の詩歌撰集。2巻。藤原公任(きんとう)撰。11世紀初めの成立だが,具体的な年次については諸説がある。当時流行していた朗詠用として和歌・漢詩文を撰集したもので,和歌217首,漢詩句587首を収める。漢詩は白居易,和歌は紀貫之の作品が最も多い。朗詠のみならず,作文や習字の参考書としても流行し,《新撰朗詠集》など同様の詩歌撰集が多数つくられているほか,これに載る詩句や和歌は,日記や物語,軍記物語,謡曲などにさまざまにとり入れられ,日本文学全般に大きな影響を与えている。
→関連項目君が代千載佳句源為憲幼学書朗詠

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

わかんろうえいしゅう【和漢朗詠集】

平安中期の詩歌選集。2巻。藤原公任撰。寛仁(1017‐21)ごろの成立か。平安前期から,文人貴族は《白氏文集》など中国の漢詩文を規範として模倣し,とくに華麗な対句や四六駢儷(べんれい)文の秀句は,もとの作品から切り離して作文の手本にされたり朗詠されたりした。そうした秀句の摘句選集は,中国に先蹤があるが,日本でも大江維時撰《千載佳句》などが編まれている。本書もそうした選集の一つで,白楽天を尊重し多くの詩句を採るが,ほかに菅原道真,菅原文時など日本人の漢文学作品からも摘句し,さらに《拾遺和歌集》をはじめ,三代集その他から選んだ和歌を並列させている点が特徴的である。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

わかんろうえいしゅう【和漢朗詠集】

歌謡集。二巻。藤原公任撰。1013年頃成立。朗詠のための漢詩約五九〇句および和歌約二二〇首を、四季・雑に分け、それぞれをさらに細かく部類して収めたもの。出典は「白氏文集」が最も多い。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

和漢朗詠集
わかんろうえいしゅう

平安時代中期の歌謡。二巻。『和漢朗詠抄』『倭漢抄』『四条大納言(だいなごん)朗詠集』などともいう。藤原公任撰(きんとうせん)。「和漢」とは和歌と漢詩文をさし、朗詠に適した漢詩文の秀句588首、和歌216首の計804首を上下二巻に収める。上巻は「立春」以下歳時仕立ての四季を、下巻は天象・動植物および人事にかかわる雑題を百科全書風に総計114項目(付加項目を含めると125)に分類。各項目は、中国人の長句・詩句、邦人の長句・詩句・和歌の順に配列するのを原則とする。詩句のほとんどは七言二句のものであり、それも、七言律詩の頷聯(がんれん)・頸聯(けいれん)(もっとも対句の華麗な第3・4、第5・6句目)二聯のうちの一聯をとることが多い。『千載佳句(せんざいかく)』『古今和歌六帖(じょう)』からの引用が著しいが、中国作者はほぼ唐代の詩人に限られ、中・晩唐期の詩人が多く、なかでも白居易(はくきょい)は元(げんしん)以下を圧倒し、唐人詩句の実に7割近くを占め、本朝詩人では、菅原道真(すがわらのみちざね)(詩句数で第一位)、菅原文時(ふみとき)(詩句・摘句総数で第一位)に次いで、大江朝綱、源順(したごう)、紀長谷雄(きのはせお)など天暦(てんりゃく)期(947~957)の詩人が主流をなし、和歌作者では、紀貫之(つらゆき)、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が尊重され、いずれも一条(いちじょう)朝の美意識を反映する。貴族・武家の学問教養の基本図書にあげられ、和漢を問わず、後代文学への影響は甚大で、『新撰朗詠集』以下後続の類書をも生んだ。[渡辺秀夫]
『大曽根章介・堀内秀晃校注『新潮日本古典集成 和漢朗詠集』(1983・新潮社) ▽川口久雄著『平安朝日本漢文学史の研究』上中(1975、82・明治書院)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

出入国在留管理庁

政府が2019年4月に発足を予定している法務省の外局。18年12月の出入国管理法改正案成立に伴う外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、同省の内部部局である入国管理局を再編・格上げし、新設することが...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

和漢朗詠集の関連情報