機能性心雑音(読み)きのうせいしんざつおんむがいせいしんざつおん

家庭医学館 「機能性心雑音」の解説

きのうせいしんざつおんむがいせいしんざつおん【機能性心雑音(無害性心雑音) Functional (Innocent) Murmur】

[どんな病気か]
 心臓を聴診すると雑音が聞こえるが、異常とはいえない場合をさし、病気ではありません。多くは子どもで聞かれますが成長すると消失します。高齢者でも、病気とはいえないが動脈硬化や弁の軽度の硬化により雑音が聞かれることがあり、広い意味で機能性雑音といえます。
[原因]
 一般に心臓の雑音は、血液が急に狭い部分を通過するときに血流速度が増加したり、弁を通して血液が逆流するときなどに、血液が渦(うず)を巻くように乱流になると生じます。
 子どもの心臓はおとなより血液を押し出す力が強く、血流速度が速いことなどから、左心室から大動脈弁を通して大動脈へと血液を押し出すときに乱流が生じて雑音が出ると考えられます。
 静かな部屋で注意深く聞くと、14歳以下の子どものほとんどで、これが聞こえるとの報告もあります。寝た状態で聴診したほうがよく聞こえ、興奮していたり、熱があるときや運動した後などでは聞こえやすくなります。また、貧血があったり、脈がゆっくりのときも大きく聞こえます。
 高齢者で聞こえる病的でない雑音は、大動脈弁や大動脈の一部が動脈硬化により硬くなることによって、血液の流れが乱流となることで生じます。
 病気ではないため症状はありません。
[検査診断]
 心臓の診療に慣れた専門医が診察すれば無害性かどうかは判断できます。胸部X線写真や心電図参考にする場合もあります。それでも診断に迷った場合には、心エコー検査心臓超音波検査(「心臓超音波検査(心エコー」))を行ない、診断は確定します。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「機能性心雑音」の解説

機能性心雑音
(子どもの病気)

 機能性心雑音とは、心臓に異常がないのに心臓から聞こえる雑音のことです。無害性心雑音ともいいます。これは、正常に心臓が血液を送り出している時に聞こえる音で、典型的な場合は楽器の弦を鳴らした時のようなブーンという音のようになります。

 そのほか、貧血があったり、発熱、運動後など心臓から送り出される血液量が多い時などに聞こえる雑音もこの分類に入ります。

 一方、多くの先天性の心臓病では、心臓の壁に穴があいていたり(欠損孔(けっそんこう))、弁や血管が狭かったり(狭窄(きょうさく))、弁が逆流(僧帽弁(そうぼうべん)の閉鎖不全)しているため、やはり心雑音が聞こえます。これらは狭いすきまから血液がもれる時の音で、風が吹くようなザーとかシューというような長い音として聞こえます。

 このような心雑音が聞こえた場合には、機能性心雑音との区別が必要です。聴診器である程度可能ですが、心エコーなどの検査での確認が必要な場合もあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の機能性心雑音の言及

【心音】より

…正常な場合でも,心雑音は動脈に血液が流れるときに,短い強度の低い音として聞かれることがある。これを機能性心雑音(無害性心雑音)と呼ぶ。しかし多くの場合,耳に強く残る中等度以上の雑音は異常である。…

※「機能性心雑音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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