日本大百科全書(ニッポニカ) 「欧風刺しゅう」の意味・わかりやすい解説
欧風刺しゅう
おうふうししゅう
概説
以前はフランス刺しゅうといわれていたが、ヨーロッパを中心に東西各地方で使われているステッチが集められているということで、近年この名でよばれるようになった。基礎になるステッチをいろいろに発展させることができるため、ステッチの数はしだいに増えてきている。
[木村鞠子]
針
刺しゅう針も糸の太さによって選ぶ。また刺しゅうの種類によっては、針の先が丸みをもったものも使う。そのほか毛糸針など。
[木村鞠子]
由来、刺しゅうの種類
「刺しゅう」の項を参照のこと。
[木村鞠子]
布地の種類
(1)麻 刺しゅう用の布として、木綿地とともにもっとも多く使われる。麻はヨーロッパ各地の刺しゅうのなかでいちばん多く使われている。厚手、薄手とその種類も多く、また、色数も多いので広い範囲に使用される。
(2)ジャバクロス(粗目(あらめ)) 縦・横が4本ずつの糸で織られている木綿地。織地が升目になっているので、布目が数えやすく、区限刺しゅうなどにも向く。
(3)ジャバクロス(中目) 粗目のものより細かい織り目で少し薄手の布。この織り方で目の密なものもあるので広範囲に使われている。
(4)コングレス 縦・横とも木綿の太めの糸1本で織られたざっくりした平織地。区限刺しゅうや、ラフな感じの刺しゅうに向く。
(5)オックスフォード 縦糸・横糸とも3本ずつ並んで織られている。少し厚手にはなるが、柔らかいのでよく使われる。
(6)ハーダンガークロス ハーダンガー刺しゅうに使われる布地で、縦・横とも2本ずつの糸を並べて織ってある。これも布目が数えやすく、また織り糸をカットして抜きやすいという特徴がある。
(7)ワッフルクロス 撚(よ)りの甘い糸を、縦・横とも4本ずつ並べて織ってある。横糸だけが太めの糸や毛糸などが通しやすいように浮かして織られているので、スーダン刺しゅうなどに使われる。
(8)スウェーデンクロス スウェーデン刺しゅう用に織られた布なのでこの名がある。木綿の二重織になった厚地のもので、格子状に縦糸が3本ずつ浮かして織ってある。織り地をすくって刺す。また他のステッチを使ったほかの刺しゅうにも使われる。
(9)ベンガルクロス(麻、木綿) 縦・横が2本ずつ並べて織られている。厚手で、織り目がはっきりした布で、麻地のほうが少しラフな感じになる。太めの糸や毛糸を使うものなどに向く。
(10)ドンゴロス ヘシャンクロスともいう。節のある糸を使って粗目に織られているので、ラフな感じを生かす技法に向く。袋物、壁掛け、敷物などによく利用される。
(11)アジュールクロス 麻のやや細めの糸で、ざっくりと平織にした布。アジュール刺しゅうに使われるためにこの名があるが、他の刺しゅうにも使われる。
(12)チュール 織り目が六角形のネット状の布で絹、木綿、ナイロンなどがあり、網目の大きさも大小ある。絹はしなやかで、ナイロンは木綿より少し張りがあるため、目的によって選ぶとよい。
(13)キャンバス(1本織り、2本織り) 縦・横とも1本または2本織りがあり、目の粗いものから細かいものまで各種ある。1本織りはシングルキャンバス、2本織りはダブルキャンバスという。いずれも全体を刺し埋める場合が多く、芯(しん)糸を入れながら刺すこともある。
(14)抜きキャンバス ストラミンともいう。ネット状に織られていて、そのままキャンバス刺しゅうと同じように使われる場合と、縦・横の織り糸が抜きやすい点を利用し、布目の数えにくい布や図案を斜めに置いて区限刺しゅうをするときなどに使う。その方法は、布の上に抜きキャンバスを自由な位置や方向に置き、しつけ糸で周りを軽く止め、その上から刺して、できあがってからキャンバスの織り糸を全部抜き取る。
(15)フェルト 織り目の見えない厚手の布で、裁ち目がほつれないため、アップリケ、袋物、敷物などに使われる。太めの糸や毛糸、ブレード、コードなどを使ってもおもしろい。
(16)サテン 絹、木綿、合繊などがある。光沢のある布で使用範囲も広い。
そのほか、ブロード(平織木綿地)、ギンガムチェック(薄手の木綿格子地で大小がある)、細縞(ほそじま)木綿地、水玉模様なども、ギンガムと同じくスモッキングなどにしるしをつけずに使えるので好まれる。別珍、ベルベット(木綿、絹、合繊がある)は毛足のある柔らかい布で、刺しゅう糸、リボンなどを用いるといっそう豪華な感じが出る。特殊なものとして革、人工皮革、樹皮などを用いることもある。
[木村鞠子]