手芸用語。アップリケとは、はる、とじつける、布置きするなどの意味で、古くは衣服の傷みかけた部分や破れたところに別布を置き補修することから始まった。やがてそれが、実用性と装飾を兼ねたものになったといわれる。
[木村鞠子]
ヨーロッパでは中世に大いに発達し、祭壇の掛け布、僧服、服飾や室内装飾に用いられた。日本で一般に使われたのは、明治末期ごろであり、布置き刺しゅうといわれて伝えられた。また、北海道のアイヌ模様にも、アップリケの技法がある。
[木村鞠子]
土台布の上に、色、柄の異なった布を図案どおりに切って置き、かがりつけてつくる。布地によっては、裏側に和紙などで裏ばりをする場合もある。布地のほかに編地、革、レースなどを使って変化を出すこともある。また、中央アメリカ、カリブ海のサンブラス諸島に住む先住民のつくる「モラのアップリケ」は、特異な方法でつくられる。モラとは、上衣(ブラウス)の意味であり、クナ人の女性のブラウスとして着られているものである。これは、強烈な色彩の布地を数枚重ねて、切り込むことによって違った色を出すもので、図案によっては上に部分的に布を置いたり、刺しゅうを加えることもある。特徴としてパターンはなく、各自が思い思いの柄を考えてつくる。伝説や神話、また、自分たちの身の回りにある動物、鳥、魚、ヘビ、カタツムリなどを図案化している。切り込んだところは内側に折り曲げてまつりつける。つくられたものに、同じ図案はないともいわれている。たいへん手の込んだ珍しい民芸品である。
また、最近のアップリケには、置いた布の一部を浮かしたり、離したり、はめ込んだりしたものや、芯(しん)を入れて立体感を出したアップリケ・キルティングなどもある。
[木村鞠子]
チェーンステッチ、アウトラインステッチ、ボタンホールステッチ、サテンステッチ、コーチングステッチ、千鳥かがり、まつり縫い、ミシン縫いなど。そのほか糊(のり)付け、接着剤も使われる。
[木村鞠子]
一般にほつれにくいものがよい。織り目の密なウール地(フェルト、メルトンなどは切りっぱなしで使うこともできる)、コーデュロイ、ギンガム、ブロード、ピケ、平織の木綿地、麻地、化繊地、絹地、ベルベット。布地以外ではコード、山形テープ、バイヤステープ、ブレード、ケミカル・レース(部分を切って使う)、編んだモチーフなど。特殊なものとして、革、合成皮革、毛皮、貝殻、ボタン、プラスチック製品、金属薄板など。
[木村鞠子]
服飾、アクセサリー類、室内装飾、袋物、敷物、膝(ひざ)掛け、舞台衣装、緞帳(どんちょう)、衝立(ついたて)、旗類など広く用いられる。
[木村鞠子]
布置きししゅう。貼り付ける意のラテン語に由来。土台となる布の上に,図案の形に切った別布,皮革などをのせ,図柄の周囲をボタンホール・ステッチ,アウトライン・ステッチほかのししゅうのステッチで,土台布にとめつける。ししゅう糸で図柄の部分を全部埋めていく作業よりも,単純化した大きい図柄なども容易にでき立体的。上着の肘やズボンの膝など布地の弱った部分に,補強と装飾を兼ねた〈当て布〉として,皮革などを用いることもある。洗濯の頻度の多い幼児のエプロン,スモック,小物などには,土台布,アップリケ布とも木綿などで水に強く,ほつれにくい材質を用い,図柄の端の始末も縫いしろをつけて折りまげ,しっかりしたステッチでとめつける。アップリケは古代エジプトのころから,衣服の弱い部分の補強を目的として使われていた。4世紀ごろ,ビザンティンでは服飾や室内装飾などに発展し,中世には高度な技術でヨーロッパに普及した。日本へは20世紀初頭に伝わったが,江戸時代から続いている〈押絵(おしえ)〉〈切付け〉〈切嵌(きりば)め〉なども,同様の手法で,小袖の装飾や細工物,アイヌの衣服などにみられる。
執筆者:船戸 道子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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