歯ぎしり(読み)はぎしり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯ぎしり」の意味・わかりやすい解説

歯ぎしり
はぎしり

一般に睡眠中に歯と歯がすり合う音や、歯を強くかみ合わせて音をたてることをいうが、専門的には、昼夜を問わず意識的または無意識的におこる歯と歯の異常な咬合(こうごう)関係を総称して、ブラキシズムbruxismという。この意味での歯ぎしりは、(1)ギリギリと音を発する歯ぎしり(グラインディングgrinding)、(2)断続的なくいしばり(クレンチングclenching)、(3)反復しておこる上下の歯の異常接触(タッピングtapping)の3種類に分類される。こうした歯ぎしりにおいては、習慣性の反復的または持続的な異常な力が、歯を顎骨(がくこつ)に結合している歯周組織に直接伝えられるため、ときには歯根膜および歯槽骨外傷を与えてそれらの組織を破壊することがある。この状態を咬合性外傷とよぶ。歯ぎしりの原因としては、咬合の不調和や精神的緊張ストレス)などがあげられる。

 治療法としては、(1)咬合の不調和の修正目的とした咬合調整法、(2)特定の少数歯に加わる異常咬合力から歯周組織を保護する目的でのバイトガードbite guard(ナイトガードnight guardともいう)の装着、(3)ブラキシズムの為害性を認識して、夜間の歯ぎしりは絶対にしないという自己暗示にかける暗示療法などがある。

[加藤伊八]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「歯ぎしり」の解説

歯ぎしり
(歯と歯肉の病気)

 歯ぎしりとは、口のなかに食物のない状態で下のあご前後左右に動かし、上下の歯を強くこすり合わせる習癖で、睡眠中にきりきりと音をたてる症状がよく知られています。歯ぎしりの習癖をもつ人の多くは、歯に咬耗(こうもう)と呼ばれる特徴的なすり減った跡がみられます。

 歯ぎしりの原因はまだ十分に明らかにされていないのですが、とくに早期接触と呼ばれる噛み合わせの不良に、ストレスなどの精神的因子が重なった場合によく発生するといわれています。

 歯ぎしりによりあごや頭の筋肉を酷使するため、肩こり、あごの痛み、あごのだるさ、目の奥の痛み、偏頭痛(へんずつう)が起きます。また、あごの関節に負担がかかることによって顎関節症(がくかんせつしょう)を引き起こすことがあります。時には歯が折れることもあります。また、歯周病が悪化する原因にもなります。

 歯ぎしりの治療法としては、原因となる早期接触の除去など噛み合わせの調整、ナイトガードと呼ばれるマウスピースの装着のほか、精神的ストレスの緩和、自己暗示療法などがあげられます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

百科事典マイペディア 「歯ぎしり」の意味・わかりやすい解説

歯ぎしり【はぎしり】

咬合(こうごう)の異常習癖の一つで,歯を強くこすり合わせて断続音を出すもの。睡眠中にみられる上下の歯を強くすり合わせて,特有のきしり音を生ずるタイプは,一般に睡眠の浅いときに多いといわれる。昼間無意識に行われる場合は,かみしめたり,くいしばったり,上下の歯をカチカチさせる癖となる。睡眠中に用いるナイトガードもあるが,暗示療法や咬合調整で治療できることもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歯ぎしり」の意味・わかりやすい解説

歯ぎしり
はぎしり
teeth-grinding; bruxism

小児期から始り,主として睡眠中に起る。意識障害とか強い精神的ストレスのある場合にみられるほか,咬合の不調和にもよる。

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