日本大百科全書(ニッポニカ) 「歴史神学」の意味・わかりやすい解説
歴史神学
れきししんがく
Historical theology 英語
Historische Theologie ドイツ語
キリスト教神学において聖書学、組織神学(あるいは教義学)、実践神学と並ぶ一部門。今日では、教会史、教理史とほとんど同じ意味で使用される。およそ神学がキリスト教を歴史現象とみなして研究対象とし、歴史研究の方法をもって処理するときには、聖書も、信仰の体系的思考も、信仰実践も、すべて歴史的考察の対象となり、聖書学も、組織神学も、実践神学も、その一部分ないしは全体が歴史神学に含められることになる。要は、歴史と神学のそれぞれの意味づけによって、歴史神学の内容・範囲が変わってくるということである。とくに19世紀から20世紀初めにかけての自由主義神学においては、歴史神学は全盛期を迎え、シュライエルマハーでは教義学も歴史神学の一部分とまで主張された。20世紀になって弁証法神学が主流の地歩を占めるにつれて、バルトのように、歴史神学を準備段階の学問とみなして、神学の主要部門から外してしまう説まで唱えられるに至った。さらに1960年代になると弁証法神学に対する批判がおこり、過去のみならず、将来への予想と希望をも含んだ広い意味の歴史としてキリスト教を取り扱おうとする動向が生じ、神学の再編成の声がおこりつつある。
[森田雄三郎]