キリスト教神学の一部門。キリストの救いを実現するための教会固有の実践を対象とする。教会における礼拝行為を扱う礼拝学(典礼学),説教を論じる説教学,教会や学校における信仰教育を対象とする教会教育学,個人の魂のために配慮する牧会学の4学科が主要学科である。これ以外にも教会の行政,法規,教会建築や美術,社会福祉等が実践神学の主題とされることもある。また,現在では実践神学の概念・歴史・方法を論じる序説,実践主体としての教会や,その使命である宣教・伝道を論じる原理論を重視する傾向がある。現実に即した考察をするために,社会学,心理学等の方法を援用することも多い。神学校教育において,将来の牧師(司祭)職に備えて,技術的訓練を行い,実際的な勧告を与えることもまた,実践神学の主要な任務である。そのような実際的教育や,それに関する著述は昔から行われてきたが,これを神学学科として整えたのは,F.E.D.シュライエルマハーであり,彼を実践神学の父と呼ぶ。その後も,主としてドイツ・プロテスタント神学において学問的に発達した。イギリス,アメリカでは理論的な神学を実践的な場に適用する応用神学applied theologyと呼ぶことも多く,実践神学の概念が一般化してきたのは最近のことである。日本でも第2次大戦後,学問的な業績を生むようになった。
→神学
執筆者:加藤 常昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キリスト教神学の一部門で、教会固有の実践活動に関する理論的省察を担当する。聖書神学、歴史神学などが過去性に重点を置くのに対して、実践神学は組織神学とともに現在性に重点を置く。優れて実践的な性格をもつ神学において、実践神学は「神学の冠」(シュライエルマハー)ともいわれ、説教学、礼拝学(典礼学)、キリスト教教育学、牧会学、牧会心理学(牧会カウンセリング、臨床牧会訓練などを含む)、伝道学、教会法学などを一般に含むが、教会音楽、教会美術、教会建築、世界教会学(エキュメニズム)、キリスト教社会福祉学などが含まれることもある。
[熊澤義宣]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…分け方や呼称は立場によって異なることがあるが,基本的には理論的部門と実践的部門に二分される。理論的(学問的)部門には,教義や思想を体系的に論ずる組織神学,教会史や教義史を研究する歴史神学,聖書を研究する聖書神学が含まれ,実践的部門は実践神学と呼ばれる。組織神学は教義学と倫理学とを含む。…
※「実践神学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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