死に至る直前の状態をいう。死の直前には体の種々の機能が失調をきたすか、ほとんど停止した状態となる。具体的には循環系不全、肝不全、胃不全、呼吸障害、栄養失調、脱水症などといった症状が現れてくる。呼吸はしだいに浅く緩やかで、しかも不規則となり、鼻翼呼吸や下顎(かがく)呼吸をしたり、あるいはチェーン=ストークス呼吸(異常呼吸の一種で、呼吸している期間としていない期間が周期的に交互に現れる)などの症状が現れる。これとともに脈拍は頻数微弱となり、血圧は下降する。皮膚の色は一般に蒼白(そうはく)土色となり、身体の末端に触れると冷たく感じる。また鼻先は鋭くなり、眼球は落ち込んでまぶたが下垂し、半分閉じたようになる。下顎は下垂し、口唇も弛緩(しかん)するなどのいわゆる死相を呈する。死戦期にあっては、全身のすべての反射機能が低下するために、瞳孔(どうこう)は光に対しての反応が鈍くなり瞳孔散大の現象をおこす。嚥下(えんげ)も不能になって咽喉(いんこう)(のど)に粘液がたまり、呼吸時喘鳴(ぜんめい)を発する。また、口をあけて呼吸するため、上気道や口腔(こうくう)の粘膜は乾燥する。両便の失禁もおこり、意識も消失する。このような状態のときは義歯を外し、窒息を予防するために咽喉に詰まった粘液はふき取るか吸引して除去し、口腔・口唇に水を含ませるとよい。
[山根信子]
…したがって,生活反応はその侵襲が生前に作用したか,死後に作用したかの鑑別に応用され,法医学上重要な意義をもつ。ただし,死の直前の時期(死戦期)における反応は通常弱いので,生活反応の有無の判定が困難な場合もある。生活反応には,(1)侵襲の作用した局所あるいはその近くに限局してみられる反応(局所的生活反応)と,(2)侵襲の作用部位から隔たった部位に限局して,あるいは全身性にみられる反応(全身的生活反応)がある。…
※「死戦期」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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