改訂新版 世界大百科事典 「水豊ダム」の意味・わかりやすい解説
水豊ダム (すいほうダム)
中国と朝鮮との国境を流れる鴨緑江の上流,平安北道北部に建設されたダム。河口から105kmの地点にあり,日本植民地時代の末期に8年の歳月をかけて1944年に完工。鴨緑江の本・支流に設けられた赴戦江ダム(1930),長津江ダム(1935)などの大規模ダムの計画のうち最大のものである。重力ダムで高さ100m,ダムによって形成された水豊湖は長さ100km,面積345km2にも達する。現在,水豊水力発電所は出力10万kWの発電機を七つ持つ朝鮮最大の水力発電所であり,電力は中国と朝鮮民主主義人民共和国が1/2ずつ使っている。太平洋戦争から朝鮮戦争へかけての混乱期に発電所が破壊されたが,戦後ソ連の援助などにより復旧された。水豊発電所の電力を基礎として,新義州および中国東北地方に重化学工業が発達した。水豊ダムが建設されたため,鴨緑江上流地域の木材をいかだ流しによって河口まで運搬することが不可能となり,平北線(定州~青水)や満浦線(順川~満浦鎮)などの鉄道が木材輸送の主要手段となった。
執筆者:谷浦 孝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報