改訂新版 世界大百科事典 「江戸幕府日記」の意味・わかりやすい解説
江戸幕府日記 (えどばくふにっき)
江戸幕府の諸役所で公務について記した日記類のこと。江戸幕府の各セクションは,時代によって精粗はあるが,それぞれ業務上のことを備忘のため記録した。それらのなかで幕府政務の中枢である御用部屋の日記(《御用部屋日記》)と,本丸・西丸の奥右筆が記した日記(《右筆所日記》)がもっとも基本的なものである。それには将軍または世嗣の動静を中心に,諸行事・人事・法令などが巨細に記されている。これらはその重要性にかんがみ,しばしば転写編纂されていくつかの伝本をつたえている。そのなかでもっとも有名なのが内閣文庫に所蔵されている《柳営日次記》771冊である。また特殊なものであるが《幕府書物方日記》225冊(内閣文庫蔵,《大日本近世史料》所収)も有名である。幕府日記は作成に精粗があるうえ,1657年(明暦3)の大火による焼失をはじめ,散逸したものも多いので,広く残編断帙を探って編纂した《徳川実紀》にその代役を求めるのが便利である。
執筆者:大石 慎三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報