泉郷(読み)いずみごう

日本歴史地名大系 「泉郷」の解説

泉郷
いずみごう

戦国大名今川氏の料所(直轄領)。郷域は現清水町北部から中心部へ流れる柿田かきだ(かつては泉川とよばれた)流域を中心に、南部は狩野かの川以東、さかい川以西の地を含んでいて、旧泉庄の大半(八幡郷を除く)を占める。和泉郷とも書く。天文五年(一五三六)一一月五日、今川義元は三浦弥次郎に「和泉郷内矢部九郎左衛門分百姓等」の年貢未納等の取締を命じている(「今川義元朱印状写」三浦文書)。なお宛所の三浦氏が郷内に有した知行分は、その後、永代買得により義元菩提寺の駿府天沢てんたく寺領となっている(永禄一二年正月一八日「臨済寺領・天沢寺領等書立土代」臨済寺文書)。天文二一年三月二〇日、今川義元は「泉郷料所方并諸給衆田畠屋敷等」を安堵しており(「今川義元判物」高田義金氏所蔵甘利文書)、当郷は今川氏の料所となっていた。またこの年、著名な泉郷検地が実施されている。翌二二年二月一二日、義元は泉郷検地の「案内者」杉山善二郎に対し、当郷の本増分の年貢を請負わせ、忠節分を給与して名職を安堵している(「今川義元判物写」判物証文写)。この杉山氏に対しては、弘治元年(一五五五)以降、検地訴人が現れて紛糾するが(永禄三年八月八日「今川氏真判物写」同文書)、永禄七年(一五六四)六月五日(「今川氏真判物写」同文書)、および同一〇年二月一日(「今川氏真判物写」同文書)今川氏真によって当郷代官飯尾若狭入道や百姓らによる新田開発分の競望が退けられ、杉山氏は当郷における地位を確立する。


泉郷
いずみごう

長狭ながさ平野北部、待崎まつさき川上流域左岸に位置し、現和泉いずみ周辺をさすものと考えられる。当地には古代から中世にかけての条里遺構(根方上ノ芝条里跡)や中世城郭跡(室戸城跡・鶴見城跡)が所在し、また付近一帯が「吾妻鏡」にみえる東条とうじよう御厨の比定地の一つに擬せられることなどから、早くから長狭平野の中心的地域であったことがうかがえる。しかし史料上確認できるのは戦国末期まで下る。戦国期の長狭郡一帯はほぼ小田喜正木氏の支配下にあり、正木氏は里見氏の同盟者的存在であったが、天正期(一五七三―九二)の憲時の代には自立性を強め里見氏と対立するに至っていた。


泉郷
いずみごう

和名抄」高山寺本にはみえない。嘉応元年(一一六九)一一月日付権大僧都顕―解案(東大寺文書)大蔵おおくら(現鯖江市)の四至を示して「東限泉郷堺」とみえ、また「百錬抄」の承安四年(一一七四)四月三〇日条に「越前国泉北御厨事」ともみえる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

普及版 字通 「泉郷」の読み・字形・画数・意味

【泉郷】せんきよう

黄泉

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