日本大百科全書(ニッポニカ) 「波浪害」の意味・わかりやすい解説
波浪害
はろうがい
波浪のもつ力によって直接引き起こされる船舶や構造物の被害と、侵食や沈積に伴う海岸地形の変形による被害。浪害ともいう。台風や発達した低気圧に伴う巨大な波浪は、直接あるいは間接的に海難の原因となり、船舶が大型化しても海難は後を絶たない。荒天のための避航や出漁不能による経済的な損失も間接的な浪害と考えられる。沿岸部では、防波堤や港湾施設などが高波によって直接破壊されることもある。波の力は大きく、1000~2000トンものコンクリート塊が高波によって移動したという報告もある。そのほか、波による漂砂、侵食、沈殿によって海浜が変形し、海岸付近の土地や道路が失われたり、港が破壊されたり埋没してしまうこともある。間接的には、くだけ波によるしぶきが風によって内陸部に運ばれ、農作物や送電線に被害を与えることもある。釣り、ヨット、海水浴などのレジャー活動の際に高波に襲われるという事故も増えている。
[桜井邦雄・三河哲也]
『高橋博・竹田厚・谷本勝利・都司嘉宣・磯崎一郎編『沿岸災害の予知と防災――津波・高潮にどう備えるか』(1988・白亜書房)』▽『青木孝著『いのちを守る気象学』(2003・岩波書店)』