日本大百科全書(ニッポニカ) 「浄法寺塗」の意味・わかりやすい解説
浄法寺塗
じょうぼうじぬり
岩手県二戸(にのへ)市浄法寺町地区を中心に生産される漆器。椀(わん)類を主に、八幡平(はちまんたい)市や盛岡市でも生産する。8世紀前半に開山された浄法寺町御山(おやま)の天台寺の僧が、自家用に使用する漆器をつくったのが始まりで、浄法寺御器(ごき)、御山御器と称せられた。黒地に草花文などを朱か紅柄(べんがら)の色漆(いろうるし)で描いた素朴な味わいのもの。正平(しょうへい)年間(1346~70)創建の奥州(おうしゅう)市水沢(みずさわ)区黒石町の禅寺・正法(しょうぼう)寺でつくられた正法寺椀が、この浄法寺椀に影響を与えたという説もあるが、椀の形式や加飾に相違があり、認めがたい。なお、これらに秀衡(ひでひら)塗を加えて、旧藩政時代の南部領で生産された漆器を総称して南部塗とよんでいる。1985年(昭和60)に「伝統的工芸品」の指定を受けた。
[郷家忠臣]