改訂新版 世界大百科事典 「浚渫埋立業」の意味・わかりやすい解説
浚渫埋立業 (しゅんせつうめたてぎょう)
河川の流路の拡幅,航路・泊地の水深増加等を目的にした水底土砂の浚渫(さらいとること)作業,および採取した土砂による埋立作業等を行う産業。四方を海に囲まれた日本においてはその歴史は古く,五洋建設が1896年創立,東亜建設工業が1908年創立など,大手企業の多くは明治から大正時代に創業されている。当業界が急成長を遂げたのは1960年代後半である。当時は産業港湾建設工事,あるいは臨海型石油化学コンビナート等建設のための大規模埋立工事が活発に行われており,浚渫業界に対する需要は順調に増加した。こうして,日本埋立浚渫協会の加盟会社による浚渫土量は,70年度には3億4600万m3とピークに達した。しかし,その後は設備投資が一段落したこと,環境問題から生まれた埋立規制,産業港湾建設の停滞等を背景に需要が低迷してきている。浚渫土量は71年度は前年度並みの水準を維持したものの,それ以降は減少傾向にあり,83年度は1億100万m3とピーク時の3割の水準となっている。とくに国内工事量の落込みは激しく,ピーク時の1割台の水準となっている。
今後も国内における需要は高い伸びが期待できず,業界を取り巻く環境は厳しいものと考えられる。このため業界各社は東南アジア,中近東などを中心に海外工事の受注に力をいれている。また,浚渫船の売却等によって過剰設備を削減する一方で,陸上土木部門,建築部門を拡充して総合建設会社を目ざす動きもでてきている。
執筆者:鈴木 明彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報