改訂新版 世界大百科事典 「深成作用」の意味・わかりやすい解説
深成作用 (しんせいさよう)
plutonism
plutonic activity
地下のマグマが地殻中のいろいろの場所に貫入してひき起こす現象をいう。火山作用とともに火成作用の一つである。深成作用によってできる岩石を深成岩と呼ぶ。深成岩にはいろいろな種類の岩石があるが,そのなかでも最も代表的なものは花コウ岩である。花コウ岩は主として,造山帯に広く分布する深成岩であり,時代的には始生代の初期以降いろいろな時代のものがみられる。
花コウ岩は巨大な岩体として地表に露出していることがある。たとえば北アメリカのシエラ・ネバダ山脈には,幅100km,延長数百kmという大規模な岩体がある。そのような岩体は,かつては,地下深部へ根をはった底なしの岩体であると考えられ,バソリスと呼ばれた。しかし,調査・研究が進むにつれ,バソリスにはいくつもの貫入時期の異なる岩体の複合したものもあることがわかってきた。このような複合したバソリスの主体をなすものは花コウ岩であるが,セン緑岩,斑レイ岩,カンラン岩などが相伴うこともある。また,個々の貫入岩体には,底なしではなくて,気球のような尻すぼみの形をしたものも少なくないことが明らかとなった。一般には,実際の立体的な形がどうであれ,巨大な岩体はバソリスと呼ばれている。
花コウ岩体には,周囲の岩石の構造と調和した形で貫入しているものと,周囲の構造と非調和に貫入しているものとがある。バディントンA.F.Buddington(1959)は,花コウ岩体の形や性質と周囲の岩石の性質との間には密接な関係があると主張し,花コウ岩の性質や現出状態も,その形成された深さに対応すると考えた。そして,地殻の比較的浅くてほとんど広域変成作用の起こっていないところや古い地質時代の冷却してしまった変成岩地帯などをエピ帯epizone,深くて高度の広域変成作用の起こりつつある地帯をカタ帯catazone,その中間のところをメソ帯mesozoneと呼んだ。一般に調和的な花コウ岩体は,広域変成帯に産することが多い。その場合,花コウ岩体による接触変成作用の効果と,本来の広域変成作用の効果とを明確に区別できない場合もある(カタ帯の花コウ岩)。一方,非調和的な花コウ岩体は,非変成岩の岩層中に貫入することが多く,岩相が変化に富み,成因的に関係のある火山岩を伴うことが多い。また,まわりの岩石のうけた接触変成作用の効果が明確にわかる場合が多い(エピ帯の花コウ岩)。メソ帯の花コウ岩はバソリスを形成することが多く,火山岩を伴わない。周囲の岩石の構造に対して一部調和的で,一部非調和的である。
地殻の比較的深部で形成されたと思われる花コウ岩には片麻岩と漸移するものがあり,花コウ岩が花コウ岩化作用によって形成されたとする主張の一つの有力な根拠となっている。一方,浅所で形成されたと思われる花コウ岩体は,花コウ岩マグマの固結によって形成されたものと考えられる。
セン緑岩や斑レイ岩は独立した岩体として産することもあるが,花コウ岩体にくらべて小規模であり,岩株状を示すことが多い。またカンラン岩や蛇紋岩は,広い意味の造山運動と関連して形成され,複雑な岩株状ないし岩床状を示すこともある。これをアルプス型カンラン岩と呼ぶ。またカンラン岩は層状貫入岩体中に産することもある。
→火成作用
執筆者:諏訪 兼位
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報