花コウ岩化作用(読み)かこうがんかさよう

改訂新版 世界大百科事典 「花コウ岩化作用」の意味・わかりやすい解説

花コウ(崗)岩化作用 (かこうがんかさよう)
granitization

花コウ岩とは異なる化学組成と組織をもつ岩石(たとえば砂岩泥岩)から溶融状態(マグマ)を経ずに物質の出入りによって花コウ岩に変化する一群過程総称である。トランスフォーミズムtransformismともいう。花コウ岩は玄武岩に次いで地表によく見られる岩石であり,とくに安定大陸(楯状地)の中核部や周辺の造山帯の中軸部に大量に出現している。このため花コウ岩の成因については古くから興味がもたれ,マグマの固結によって生じたとする説と花コウ岩化作用によって生じたとする対立する2説があった。1940-50年代には花コウ岩化作用説が勢力をもったが,花コウ岩の多くは岩石中に貫入岩として産出し,周囲の岩石に接触変成作用を与えているなど高温の液体であった証拠が多くあり,花コウ岩とほぼ同じ化学組成をもつ安山岩や流紋岩が液体起源であることから,花コウ岩はマグマが固結してできたとする考え方が近年大勢を占めている。

 花コウ岩化作用説をとるものは造山運動の過程で水がマントルに供給され,マントルから水に溶けたNa,Al,K,Siなどが地殻下部に供給され,それが交代作用によって堆積岩に付加され花コウ岩がつくられたと考えている。一方,花コウ岩質の地殻をマグマの固結によって説明する人々は,その大量の花コウ岩質マグマの起源をマントルに求めている。実験によれば,上部マントルを構成しているカンラン岩質物質が溶け始める温度は,島弧下の上部マントルの圧力下では無水状態で約1300℃であるが,水に飽和していれば約1100℃になる。島弧下の上部マントルでは,ほぼ1100℃程度の温度に達しており,大量の水が上部マントルに供給されれば,上部マントルの部分融解によって大量の花コウ岩質マグマを地殻に供給できるといわれている。水が上部マントルに供給されることは,プレートが沈み込んでいる島弧下の上部マントルでは十分にありそうなことである。

 造山帯に分布する花コウ岩質岩は,たいてい角セン岩相やグラニュライト相程度の高度変成岩を伴っている。一方,他の一群の花コウ岩は,ほとんど変成作用をうけていない堆積岩に貫入岩として出現している。前者の花コウ岩は,しばしば砂岩や泥岩に由来する高度変成岩に連続的に変化する産状を示し,変成作用に伴う交代作用によって花コウ岩が形成されたとする花コウ岩化作用を支持する人々の証拠となっている。しかし造山運動の過程で,水を含んだ堆積岩が角セン岩相やグラニュライト相程度の変成温度の条件におかれれば十分に部分融解することが実験的に確かめられており,そのようにしてできたマグマが集まって花コウ岩質岩を形成することもある。このようにしてできた花コウ岩は周囲の変成岩と互いに混じり合い,連続的に変化する。なお,花コウ岩化作用説には,上記のように水が介在しているとする考え方(wet granitization)のほかに,水は介在していないとする考え方(dry granitization)の2通りがあったが,後者は現在ではほとんど顧みられていない。
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化学辞典 第2版 「花コウ岩化作用」の解説

花こう岩化作用
カコウガンカサヨウ
granitization

花こう岩成因に関する説の一つ.地表でみられる深成岩火山岩では,酸性岩塩基性岩の割合はまったく逆となる.すなわち,深成岩では塩基性はんれい岩は5% であるが,酸性の花こう岩は95% にも及んでいる.このような深成岩にみられる塩基性岩と酸性岩の量比は,マグマ分化説にとっては都合が悪く,花こう岩は真の火成岩ではなく,既存のたい積岩が変化してできた一種の変成岩であるとの学説が出た.このように既存のたい積岩が,一種の高度の変成作用を受けて,花こう岩質岩石になることをいう.この場合には,石理や鉱物成分がかわるだけでなく,化学成分もかわる.たとえば,粘板岩からの場合には,SiO2やアルカリが増加し,Al2O3が減少する.またケイ質のたい積岩からの場合には,Al2O3やアルカリが増し,SiO2が減っている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「花コウ岩化作用」の意味・わかりやすい解説

花コウ(崗)岩化作用【かこうがんかさよう】

高度の変成作用の結果として花コウ岩ができる作用。花コウ岩マグマが地球内部の玄武岩または超苦鉄質岩から初生的にできることの困難,玄武岩マグマの分化でできる場合の量的困難,花コウ岩の底なしの岩体(バソリス)がどうして巨大な空間を獲得したかという〈空間問題〉の困難をさけるために提案された説。花コウ岩成因の一部と考える人が多い。
→関連項目花コウ(崗)岩バソリス

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