日本大百科全書(ニッポニカ) 「渦鞭毛虫類」の意味・わかりやすい解説
渦鞭毛虫類
うずべんもうちゅうるい
原生動物の肉質鞭毛虫門植物性鞭毛虫綱の1目Dinoflagellidaに属する単細胞生物の総称。別名の双鞭毛虫類あるいは恐鞭毛虫類は誤訳とされている。化石種も含めて1000種が知られている。主要な海産プランクトンであるが、固着種や淡水産のほかに、各種の動植物に寄生や共生するものも多い。褐色共生藻の代表であるゾーキサンテラZooxanthellaの多くはこの類である。体長10~200マイクロメートル。原始種を除き、体は前後2枚の甲で覆われ、典型的な甲はさらに多くの殻板が鎧(よろい)状に組み合わさってできている。甲は細胞膜の内側に形成されたペリクルの一種で、セルロースを含み、さらにカルシウム塩を沈着させた種も多い。体の中央部を水平に取り巻いて横溝があり、それとほぼ直角に体の後方に向かう縦溝がある。普通、2本の鞭毛をもつが、横鞭毛は片羽型で両溝の交点付近の小孔(こあな)から出て横溝中で波動する。縦鞭毛はむち型、ときに羽型で縦溝中の小孔から出て後方に伸びるが運動性はない。縦溝から刺針や触手を生じるものもある。普通、色素体をもち、体色は黄色ないし褐色で、ときに青色ないし緑色を示すが、色素体を欠く種も多い。クロロフィルaのほか、各種のカロチノイド系補助色素を含有し、おもにデンプンを合成する。淡水種は発達した眼点を1個もつものが多い。多様な栄養法が特徴で、光合成能の有無にかかわらず、甲にある多数の小孔より網状擬足(ぎそく)を出し固形の餌(えさ)を捕食し、あるいは有機物を直接吸収し、さらに細菌や藻類を共生させているものなどがある。増殖は斜二分裂のほかに、球形または三日月形のシスト(包嚢(ほうのう))をつくるものが多いが、有性生殖をするものや、鞭毛を失った個体がゼラチン質に包まれて分裂し、集塊をつくるパルメラ期のある種類も知られている。核は特異的な染色体核で、間期でも染色体は残存し、細菌型の環状DNAの束と類似の様式である。水産動物の栄養源として重要であるが、赤潮の原因でもある。夜光虫Noctiluca、ケラチウムCeratium、プロロケントルムProrocentrum、ゴニアウラックスGonyaulax、ギムノディニウムGymnodinium、などが有名。
[石井圭一]