改訂新版 世界大百科事典 「温度受容器」の意味・わかりやすい解説
温度受容器 (おんどじゅようき)
thermoreceptor
温度刺激を受けとって,外界の温度に関する情報を伝える受容器の総称で,温受容器と冷受容器がある。脊椎動物では一般に皮膚上の感覚点として存在し,それぞれ温点および冷点と呼ばれる。温受容器は特定の温度範囲では,温度が急に変化すると各温度に順応した静的応答を示すほかに,温度の上昇に対しては一時的に応答が増加し温度の下降に対しては一時的に減少する。これに対して冷受容器は静的応答範囲が温受容器よりも一般に低い方にあり,温度の上昇に対しては一時的な応答の減少,温度の下降に対して一時的な応答の増加を示す。脊椎動物の温度受容器は皮下の自由神経終末と考えられており,冷感覚神経繊維には温感覚神経繊維よりも興奮伝導速度が速いものがあることが知られているが,受容器末端の詳細は明らかでない。昆虫では温度受容器は付属肢や触角に多く,温受容器と冷受容器の区別もある。マムシ亜科のヘビの赤外線受容器である孔器官も温度受容器の一種といえる。
執筆者:立田 栄光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報