イギリスの詩人スコットの長編物語詩。1810年刊。『湖の麗人』とも訳される。前作『マーミオン』(1808)はフロッデンの戦い(1513。イングランドとスコットランドの対決)の史実を巧みに取り入れた物語詩であったが、その後を受けて、この作品はこの戦いで戦死したスコットランド王ジェームズ4世の遺児(後の同5世)を中心に、カトリン湖上の小島に住む美姫(びき)エレン、そのエレンをめぐって恋のさや当てをする勇士らを配し、恋と武勇のあやなす物語が展開する。明治に塩井雨江(うこう)による邦訳(1894)があり、わが国でも愛読された。
[朱牟田夏雄]
『入江直祐訳『湖の麗人』(岩波文庫)』
…標高111mに位置し,長さ約15km,幅約3kmで最深部の水深は151mに達する。ティース川のU字谷に湛水した氷食湖で,周囲にはベン・ベニュー山(730m)などの丘陵と森林が広がり,湖中のエレン島をはじめとする風景美はW.スコットの《湖上の美人》の舞台となった。湖水は1859年からグラスゴーの水道源となっている。…
…エジンバラ大学卒業後弁護士となり,かたわら古民謡の採集に熱中,《スコットランド国境地方古謡集》3巻(1802‐03)を出版し,古歌謡の形を模した《最後の吟遊詩人の歌》(1805)で詩人としての名声を確立した。《マーミオン》(1808),《湖上の美人》(1810)などスコットランドの過去に取材したロマンティックな物語詩で文名はますます上がった。しかし,新進詩人バイロンの名声が高まるにつれ,詩才の限度をさとって小説に転じ,《ウェーバリー》(1814)をはじめとする歴史小説で,実際の歴史的事件を背景に,ロマンティックな冒険と民衆の多彩な生活を巧みに融合し,全ヨーロッパにわたって名声を博した。…
※「湖上の美人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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