改訂新版 世界大百科事典 「滝線都市」の意味・わかりやすい解説
滝線都市 (たきせんとし)
fall line cities
ほぼ平行に流れるいくつかの川の多数の滝や早瀬,急流が横に一線上に連続的に分布する地形を滝線または瀑(布)線,フォール・ラインfall line,フォール・ゾーンといい,この線に沿って線状に分布する都市および都市群を滝線都市という。瀑(布)線都市ともいう。フォール・ラインの語はアメリカ合衆国で古くから慣用されている用語で,東部にあるアパラチア山脈南東麓のピードモント台地が,さらにその南東に広がる海岸平野に接して造瀑層をなしている境界帯をさす。ここではほぼ平行して東流し大西洋に注ぐ多くの河川が,それぞれ早瀬や急流をつくっており,この水の落差による水力を利用して初期には水車を,後には水力発電を動力源とする紡績,製粉,機械などの工業が立地した。またこの地点は河川遡航の終点でもあり,モンゴメリー,オーガスタ,リッチモンド,ワシントン,ボルティモア,フィラデルフィア,パターソンなど現在は各種工業の発達した都市が並んでいる。このため,このフォール・ラインに立地する都市群をさす場合が多い。イングランドのケンブリッジ,ピーターバラ,リンカンもその小規模な例である。
執筆者:滝沢 由美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報