滝線(読み)たきせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「滝線」の意味・わかりやすい解説

滝線
たきせん

同じような方向に流れるいくつかの水系がある場合、一般に山地平野の境付近に滝が生成される。その滝の位置を結んだ想像の線を滝線fall lineまたは瀑布線(ばくふせん)という。このような滝は、硬い岩層が水系に対してほぼ直角に走っているときに、同じ線上に滝が配列する。アメリカ合衆国東部アパラチア山脈山麓(さんろく)台地海岸平野とが接する所に滝が生成され、アパラチア山脈の硬岩と軟らかい海岸平野とが接する所に配列している。このような所には初め動力としての水車が用いられ、のちに水力発電が行われて各種の工業が発達し、多くの都市が滝線に沿って栄えたので、滝線都市といわれる。アメリカのニューヨーク、フィラデルフィアボルティモアワシントンリッチモンドオーガスタなどの各都市がその例である。

[市川正巳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「滝線」の意味・わかりやすい解説

滝線【たきせん】

フォール・ラインfall line,瀑(布)線とも。山麓などで滝が数多く一線上に並んでいる地形軟質の海岸平野と硬岩質の山地の接触線などで,浸食速度の相違により形成される。近代工業発達の初期にはこの線が水車,後には水力発電所の位置や大きい川での貨物の積替場所を決定し,そこに都市が生まれた例が少なくない。このような都市を滝線(瀑布線)都市という。ワシントン,リッチモンドなどアメリカ東海岸の諸都市はその例。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「滝線」の意味・わかりやすい解説

滝線
たきせん
fall line

山地から平野にいくつかの河川がほぼ平行に流出する際,山地と平野の境界付近にがほぼ一線上に並ぶ場合がある。これらの滝を連ねた線を滝線とか瀑布線という。アメリカの東部にあるアパラチア山脈の東山麓にはその好例がみられる。滝線の多くは,断層と一致する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の滝線の言及

【アメリカ】より

…アパラチア山脈は,(1)準平原化したピードモント(山麓)台地,(2)ブルー・リッジ,グレート・スモーキー山脈,(3)リッジ・アンド・バレー(連嶺と縦谷)地区,(4)アパラチア高原に区分される。ピードモント台地と東のコースタル・プレーン(海岸平野)のあいだには岩石の浸食抵抗の違いにより,滝や早瀬が形成され,その境界線は滝線と呼ばれている。滝線は大西洋に流れこむ河川の遡行の終点でもあり,この滝線に沿って河川交通時代に成立した都市(滝線都市)が並んでいる。…

【滝線都市】より

…ほぼ平行に流れるいくつかの川の多数の滝や早瀬,急流が横に一線上に連続的に分布する地形を滝線または瀑(布)線,フォール・ラインfall line,フォール・ゾーンといい,この線に沿って線状に分布する都市および都市群を滝線都市という。瀑(布)線都市ともいう。…

※「滝線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android