改訂新版 世界大百科事典 「金利裁定」の意味・わかりやすい解説
金利裁定 (きんりさいてい)
interest arbitrage
国際間に金利差がある場合,国際的に資金を移動して利ざやを稼ごうとする取引のこと。短期国際資本移動の大きな要素である。
固定為替相場制のように為替リスクがない場合は,内外金利差が直接に比較される。たとえば,短期利子率がニューヨークにおいて東京より高かったとすれば,短期資金の運用先を東京からニューヨークへ移すことが有利となる。しかし,変動相場制のもとでは為替リスクが生じるため,内外金利差のみを資本移動の要因とすることはできなくなる。というのは,円資金を外国為替市場でドル資金に交換し,一定期間ニューヨーク市場で運用した後,再び円資金で回収するときに為替相場がかなりドル安になっていたとすれば,東京市場で運用した場合よりも不利になる可能性があるからである。この為替リスクを回避するために先物為替が利用される。かりに資金運用期間が3ヵ月とした場合,運用後に手に入る予定のドル総額を3ヵ月先物で売っておく(為替ヘッジ)。そうすれば,海外投資を行った時点で収益を円で確定することができる。したがって,海外投資に対応する収益率は,単に利子率ではなく,それに直先(じきさき)スプレッド率を加えたものになる。そして,自由に金利裁定が行われるとすれば,自国利子率=外国利子率+直先スプレッド率,という先物カバーつきの利子裁定式が国際間に成立する。
執筆者:奥村 隆平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報