無余涅槃(読み)ムヨネハン

デジタル大辞泉 「無余涅槃」の意味・読み・例文・類語

むよ‐ねはん【無余××槃】

仏語煩悩を断ち、分別を離れ、肉体をも滅しつくした悟りの境地生存根源を残さない境地。⇔有余うよ涅槃

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精選版 日本国語大辞典 「無余涅槃」の意味・読み・例文・類語

むよ‐ねはん【無余涅槃】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。肉体などの制約から完全に解放された、永遠のさとりの境界。心だけでなく肉体のわずらいからも完全に離れた理想世界。⇔有余涅槃(うよねはん)
    1. [初出の実例]「如来名無余人、無余人所証名無余涅槃」(出典:勝鬘経義疏(611)一諦章)
    2. [その他の文献]〔摂大乗論釈‐一二〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無余涅槃」の意味・わかりやすい解説

無余涅槃
むよねはん
anupadhiśeṣa-nirvāṇa

仏教用語。有余涅槃の対。部派仏教における究極目標身心を完全に滅して得られる灰身滅智 (けしんめっち) の状態で絶対寂静の境地。この境地に達したならば,もはや迷いの生存に戻ることがない。

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世界大百科事典(旧版)内の無余涅槃の言及

【説一切有部】より

…小乗仏教の上座部から分派した一部派。サンスクリットでサルバースティバーディンSarvāstivādinといい,有部と略称される。分派史《異部宗輪論》によれば,成立は前2世紀の前半である。その後しばらくして迦多衍尼子(かたえんにし)が現れ《発智論(ほつちろん)》を著し,有部の体系を大成したという。しかし現在の研究では,有部の名の出る最古の碑文が後1世紀初頭であることから,その成立は上の年代よりやや下るものと考えられている。…

【涅槃】より

…したがって,〈涅槃に入る〉という言葉は死ぬことのほか,悟りに入ることを意味している。死を意味した涅槃が悟りの意味に用いられるようになると,迷いを断って悟りの境地に達しても,肉体が生存している期間を区別する必要があり,これを〈有余涅槃(うよねはん)〉といい,肉体の消滅した以後の状態を〈無余涅槃(むよねはん)〉と呼ぶようになった。釈迦がクシナガラにおいて涅槃に入る(死ぬ)前後の状況を詳しく説いたのが,漢文《長阿含経》中の《遊行(ゆぎよう)経》,およびパーリ語経典中の《大涅槃経Mahāparinibbāna‐suttanta》などである。…

※「無余涅槃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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